セブン解体 池袋動乱編#2Photo:PIXTA

西武池袋本店の“ヨドバシ化”に関係者が猛反発している。地元の豊島区は百貨店の存続を求める嘆願書を地権者の西武ホールディングスに提出。そごう・西武の労働組合も事業継続と雇用確保を危ぶみ、米フォートレス・インベストメント・グループに書簡を送付した。そして、意外な関係者が訴訟提起の構えを見せており、交渉次第では泥沼にはまる可能性もある。セブン&アイ・ホールディングスのそごう・西武売却を機に、池袋動乱の火ぶたが切られた。特集『セブン解体 池袋動乱編』(全6回)の#2では、今回のディールが抱える三つの「問題点」を明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

そごう・西武の百貨店事業が存亡の危機
セブン&アイ主導の株式譲渡に「重大欠陥」

 池袋で西武百貨店が開業したのは、戦後間もない1949年のことだ。三越や高島屋といった日本橋の老舗百貨店と比べて新興の電鉄系は当時“格下”と見られたが、欧米の高級ブランドをいち早く取り入れて成長。現在の西武池袋本店の店舗別売上高は、伊勢丹新宿本店、阪急うめだ本店に次ぐ全国3位だ。

 店内に美術館などの文化施設を設け、文化発信拠点としての役割も担った。豊島区の高野之夫区長はダイヤモンド編集部の取材に「文化を軸に人々を引き付け、池袋の品格をつくり上げる役割を果たしてくれた」と話す。2006年にセブン&アイ・ホールディングスに傘下入りした後も、百貨店としての事業が途絶えることはなかった。

 だが今、高野区長の言葉を借りれば、西武池袋本店は歴史的に「重要な局面」に立たされている。セブン&アイから米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループに全株式が譲渡され、百貨店の存続を危ぶむ声が上がっているからだ。

 もちろん消費者のニーズに応じ、小売りの業態が変わるのは世の常だ。だが、そうしたビジネスモデル転換の是非以前に、今回の株式譲渡プロセスは三つの重大な「問題点」を抱えている。

 このまま契約を強行すれば泥沼訴訟に陥り、それこそ「動乱」拡大の火種となりかねない。取材で判明した三つの問題点を、次ページで明らかにする。