リスク管理は実はシンプル
ゆとりを持って「割合」を決めれば良い

 ただ、投資信託のような分散投資に比べて株式投資はリスクが高いのではないかという懸念があるかも知れない。ところが必ずしもそういうわけではないし、そもそもリスク管理というのは実はそれほど大変なことではない。

 自分の金融資産の中で、どれぐらいの割合で株式や投資信託を持つかを決めればいいだけのことだ。

 この割合は人によって異なるが、例えば仮に金融資産全体の3割程度を株式にしたとしよう。さらに数銘柄に分散投資をすればよりリスクは小さくなる。例えば自分の気に入った銘柄を10銘柄程度持っていたとする。その内の3銘柄が3割ほど下落し、残りは変化が無かった場合、自分の保有する株式資産全体の下落率は9%であるし、金融資産全体で言えば、その下落率は2.7%に過ぎない。

 もちろんこれは単純計算だし、実際にどうなるかはわからないものの、自分で許容できるリスクの範囲内に株式の保有は抑えておき、かつ複数銘柄を持つことで、リスク管理は可能だ。株式の場合、せいぜい10銘柄ぐらいでも十分な分散投資効果はあるからだ。

 また、株式投資の場合、最近では単元株の10分の1の株数で購入できる方法もあるし、米国株であれば1株単位での売買も可能なので、1銘柄を買うのにそれほどまとまった資金が必要なわけではない。

シニアが持っているのは時間
持つべきは好奇心

 最近では投資信託の積み立てで資産形成をする人が増えてきている。恐らくそれは仕事が忙しくて、とても投資のことを考えたり、調べたりする余裕がないからだろう。

 ところが定年後のシニアの場合、仕事をしていなければたっぷり時間はあるし、仮に仕事に就いていても現役時代のように忙しくはないだろうから、時間的なゆとりは多い。だから世の中の変化についてしっかり勉強をする余裕があるはずだ。したがって、自分の資産運用をやりながら、同時に知的好奇心を失わずにいれるということはまさに一石二鳥と言って良いだろう。

 ただ、いくら面白いと言ってもあまり多くの金額を株式投資に向けるのは慎重にすべきだろう。冒頭にも触れたように投資に十分な経験がない場合、ややもすればマーケットの上下に心を揺り動かされ、不合理な行動をとりかねない事態が生じるし、そもそも多くの金額を投資していれば心理的な負担も大きい。それでは本末転倒である。

 老後の生活ではキャッシュにゆとりを持っておくことが大切だ。自分の金融資産のどれぐらいの割合を株式投資に向けるかは、人それぞれのリスク許容度によって異なるので一概には言えないが、一般的には3割~5割ぐらいが限度と言って良いだろう。

 自分の資産価値を維持しつつ、いつまでも好奇心を失わないようにという二つの“維持”はシニアの投資家にとっては一つのキーワードになるのではないだろうか。