学生は自分への理解度に敏感
企業のフィードバックがポイント

 大卒学生の民間企業への就職希望者数はコロナ禍前に当たる20年卒以降、45万人前後であまり変わらない。一方、企業の求人総数は21年卒がコロナ禍で減った反動で、22年卒、23年卒は回復傾向だ。23年卒では、求人総数が前年比3万人増加、求人倍率も前年比0.08ポイント上昇した。企業には旺盛な採用意欲があり、これが「売り手市場」といわれるゆえんである。
 
 企業規模別の就職希望者数に注目すると、コロナ禍に突入した21年卒は規模にこだわらず就職先を探したいという動機から、従業員300人未満の企業で11.2万人まで増えた。だが、23年卒になると4万人減って7.2万人となった。従業員5000人以上の企業では逆の傾向で、21年卒は7.2万人まで減ったが、23年卒では5万人以上増えて12.9万人だった。学生の超大手志向が進んだといえる。
 
 次に、企業の面接と内(々)定出しの開始予定月について見てみよう。23年卒では3月がピークとなる割合が増えた結果、5月までの内(々)定出し累計は22年卒の69.0%から23年卒は79.2%までアップした。「就活の早期化」が進んでいることが分かる。

 こうした状況の中、学生は仕事に何を求めているのか。また、どんなきっかけで企業への志望度が高まるのか。企業がそれを知れば、双方の就職・採用活動がよりうまくいくきっかけになる。

 ここ最近の学生が仕事に求めるトップ3は、仕事の「安定」、社会や人への「貢献」、自己の「成長」だ。学生の入社志望度が高まるのは「面接」がトップで、自分がその企業で働くイメージを持てることが、志望度向上の大きな決め手のようだ。簡単に言えば、学生の性格ややりたいこと、どんな仕事に向いているか、入社後に苦労するかもしれない点などを企業が具体的にフィードバックできるかが大事ということだ。

 逆に学生の志望度が低下した理由については、企業担当者の連絡の遅さ、断片的で曖昧な情報しか伝わってこないといった声が目立つ。学生は、自分にとって有用な情報が得られるか、自分を大事にしてくれているかどうかを敏感にかぎ分けている。

 コロナ禍以降、学生はオンラインでの情報収集が主流となり、企業の社員や社風の特性をつかむことが難しくなっている。仕事内容や労働条件の重視度が相対的に上昇し、就職後のライフスタイルや働き方を具体的にイメージできることを重視しており、「内定時に配属先を確約してほしい」「特定の勤務地で働きたい」といった学生も増えているという。転職に関する情報を目にする機会も増え、入った会社が合わなければ転職するという選択肢を視野に入れている学生も少なくないようだ。