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アマデウスたち

暦本純一
無機質なマシンに情緒を宿す

週刊ダイヤモンド編集部
【第70回】 2009年3月13日
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暦本純一
写真 加藤昌人

 幼稚園に通っていたある日、雪の運動場に出た。初めて地上に降り立ったばかりの雪に、六角形の結晶を見た。その美しさの不思議に、科学への扉が開かれた。

 小学校に上がると、書店に駆け込み、コンピュータの教本を手に入れた。漢字すら多く知らない小さな手は、紙にオリジナルのプログラムを書き進めた。

 「パソコンの父」と呼ばれ、マシンと人間との関係性を確立するユーザーインターフェース(UI)に革命を起こしたアラン・ケイへの強い憧れが、進路を決めた。今、新しいUIの境地を拓こうとしている。

 それは、従来型のハードウエアの使い勝手という機能性やデザイン性にとどまるものではない。「仮想と現実さえ跨ぎながら、空間的にスケールは広がっている」。ソフトウエアに直接触って、未来の都市空間をデザインしているようだ。

 人間に順応を強いるマウスやキーボードにとらわれない「実世界志向」のUIを追い求めてきた。いわばデジタルの世界とフィジカルをつなげる作業だ。

 それは「オーガニック」なUIに進化する。「握手したり、抱き締めたりすると、安心する。こういう人間の原始的な感覚をくみ取って動くマシンがあればいい」。

 アラン・ケイはジャズの名手として知られる。暦本もクラシックを好み、チェロを弾く。無機質なマシンに情緒を宿そうという試みの源泉は、音楽への愛にあるように思えてならない。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 遠藤典子)

暦本純一(Junichi Rekimoto)●コンピュータサイエンティスト 1961年生まれ。86年東京工業大学理学部修士課程修了。NEC、アルバータ大学留学を経て、94年ソニーコンピュータサイエンス研究所研究員。99年同インタラクションラボラトリー室長。理学博士。2007年より東京大学大学院情報学環教授を兼務。ACM SIGCHI Academyなど受賞多数。

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