選ばれるクスリ#32Photo:©Eggy Sayoga/gettyimages

胃がんの薬物治療は、肺がんほど個別化医療は進んでいない。正常な細胞も攻撃してしまう従来の化学療法が中心だ。そんな中でも正常な細胞への攻撃を避ける“新世代薬”は存在する。特集『選ばれるクスリ』(全36回)の#32では、胃がん治療薬の処方患者数ランキングを公開する。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)

胃がんの薬物治療は化学療法中心も
4位と5位は異なる治療法の薬

 がんの薬物治療では、がんの原因となった遺伝子変異に効果があるように作られた分子標的薬で治療する、プレシジョンメディシンが進んでいる。要は個々の患者に合った治療を行う個別化医療だ。従来の化学療法では正常な細胞も攻撃してしまうのに対し、分子標的薬はがん細胞をピンポイントで攻撃できる。

 胃がんでは、肺がんに比べるとプレシジョンメディシンが進んでいない。ベースとなるのは化学療法である。

 胃がんの薬物治療には、手術でがんを取り切るのが難しい進行・再発胃がんの進行を抑えることを目的にしたものと、再発予防を目的とした術後補助療法(アジュバント)の二つがある。手術でがんを取り切るのが難しい進行・再発胃がんの薬物治療は1次化学療法、2次化学療法、3次化学療法と続く。効果が低下したり副作用が厳しかったりすると、次の治療法に移り、その前の治療で使わなかった薬を組み合わせる。

 では、病院など医療機関では具体的にどんな薬が選ばれているのか。ダイヤモンド編集部は、医療情報サービスを手掛けるメディカル・データ・ビジョン(MDV)とDeSCヘルスケアのデータを基に胃がん治療薬の処方患者数ランキングを作成した。

 ランキングで1位となったテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(製品名:ティーエスワンなど)は、化学療法で用いる薬の代表格である。

 2位以下を見ても、2位のオキサリプラチン(製品名:エルプラットなど)、3位のパクリタキセル(製品名:タキソール)、6位のシスプラチン(製品名:ランダ)、7位のカペシタビン(製品名:ゼローダなど)、8位のフルオロウラシル(製品名:5-FU)、9位のイリノテカン塩酸塩水和物(製品名:カンプト、トポテシンなど)、10位のドセタキセル(製品名:タキソテール)はいずれも化学療法で使う薬だ。

 そんな中で4位と5位には、従来の化学療法とは異なる治療法の薬がランクインした。次ページでは、胃がん治療薬の処方患者数ランキングを公開する。