日本銀行Photo:PIXTA

政府は2月14日、4月で任期満了となる日本銀行の黒田東彦総裁の後任に、経済学者で元日銀審議委員の植田和男氏を充てる人事案を国会に提示した。そもそも、日本の金融政策はどうして行き詰まったのか。日銀の金融政策の「あるべき姿」とは?植田新総裁下で想定される金融政策の「修正プロセス」をひもといていく。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

植田新総裁は緩和策の修正に積極的?

 2月10日、政府は日銀の次期総裁に元審議委員の植田和男氏を起用する方針を固めたと報じられた。副総裁には氷見野良三前金融庁長官と内田真一日銀理事が起用されるようだ。

 この報道直後、外国為替市場では一時、1ドル=131円50銭台から129円80銭台まで円は買い戻された。日経平均株価は一時400円安まで売り込まれた。この市場の反応を見ると、植田新総裁は、現在の緩和策の修正に積極的とみたようだ。

 ただ、本当に植田新総裁が政策修正に積極的に行動できるかは、今後の経済や政府との関係を注視する必要がある。政策修正はそれほど単純なことではない。

 わが国の金融政策は限界を迎えつつある。どこかで、これまでの金融政策を修正することは避けられない。1998年から7年間、植田氏は日銀の審議委員として、わが国の金融政策の策定に参画した。同氏は、金融政策の柔軟性、持続性を重視したといわれている。

 現在、わが国の銀行などの金融システムは健全だが、日銀の多額購入で国債市場の流動性枯渇は深刻だ。また、いつまでもマイナス金利を続けるわけにはいかない。これから日銀は植田新総裁の下、時間をかけ金融政策の正常化のタイミングを計り、あるべき政策への回帰を目指すことになるはずだ。