欧米の成長率、上方修正
怪しくなった「インフレ沈静化」

 2023年の世界経済を見据える上で一つの参考になるのがIMFの成長見通しだが、ゼロコロナ政策が撤廃された中国経済の生産再開などを受けて今年の予想が昨年10月時点から大幅に上方修正された。

 中でも米国経済は1.4%、ユーロ圏は0.7%の成長見通しとなっており、欧米が今にも景気後退局面に入りそうな懸念に包まれていた昨年末とは、雰囲気がガラリと変わった。

 とりわけ米国は、株価が昨年10月からの上昇基調を維持し、今年1月にはナスダックが10%を超える上昇率を記録した。中国の景気急回復を見込んで短期マネーが流れ込むなど金融市場は活況だ。

 またサービス業を中心に人手不足で賃金上昇圧力は依然、強い一方で、これまでインフレ鈍化を象徴していた中古車や中古住宅の価格が再び上がり始めている。

 FRB(米連邦準備制度理事会)は2月に0.25%の利上げを決め、利上げ幅を2会合連続で縮小、利上げペースを通常に戻したが、パウエル議長が描くインフレ沈静化による景気の軟着陸シナリオは怪しくなっている。