EV化が進む都市部のタクシー、
ロボタクシーもテスト走行中

 ソウルのタクシーは、一般のタクシーと、無事故歴10年以上のドライバーが乗り、運転や応対が丁寧な黒塗りの模範タクシーに分かれている。初乗り(1.6キロ)料金が2月1日から値上げされ、一般タクシーで約480円、やや高めの模範タクシーは約700円だが、それでも、東京23区内タクシーの初乗り約1キロ470円~500円よりは(距離も考慮すると)安価といえる。

 ソウルでは流しのタクシーも次々にやってくるので困ることはないが、街中で観察していると、特に若い人はカフェなどでお茶している間にアプリで手配し、来たら乗るというようなスタイルが定着しているようだ。特に冬は、そのほうが寒い戸外で待つ必要がなく、支払いも同時に済むので、合理的ということなのだろう。

 その一般タクシーで今回目立ったのが、現代自動車(ヒョンデ)のEV、「IONIQ 5」(アイオニックファイブ※)だった。日本でもインポート・カー・オブ・ザ・イヤーに選ばれ、京都のMKタクシーも計50台の導入が進行中。筆者自身も発表時から注目していた車である。

ヒョンデ自動車のIONIQ 5をベースに開発されたロボタクシーEVに新たなデザイン言語と価値観を持ち込み、タクシー車両としても活躍するヒョンデ自動車のIONIQ 5をベースに開発されたロボタクシー Photo:Hyundai Motor Company

 IONIQ 5のエクステリアは、パラメトリックピクセルと呼ばれるデジタル由来のデザイン要素がLEDヘッドランプ、同リアコンビランプ、アルミホイールに採り入れられている。インテリアのデジタルメーターにも、他には見られないホワイト系のベゼル(筆者は、iPodや白いバリエーションが存在した時代のiPhoneやiPadを想起した)を採用するなど、独自のEVイメージを確立しようとする意思に満ちている。

 その意思は、テスラにもないヘッドアップディスプレイ(スピードやナビ、死角エリアの車両センサー情報などをフロントウィンドウにAR投影する)や、クラス最長の3メートルのホイールベースと切り詰めた前後のオーバーハングがもたらす全体のプロポーション(そのためにコンパクトに見えるが、実際のサイズはトヨタのRAV4よりも大きい)、全席に位置や背もたれ角度のメモリー機能が付き、センターコンソールを含めて大きく前後に移動できる電動シートアレンジ、停車中にフロントシートを座面ごと傾けて休めるリラックスポジションなど、インテリアの随所にも散りばめられている。

※2022年6月に、韓国でIONIQ 5が高速道路上の構造物に突っ込む単独事故により、衝突後3秒でリチウムイオンバッテリーが発火し、ドライバーと同乗者が死亡という痛ましい報道があったが、これは時速100キロでノーブレーキの衝突、かつシートベルト未装着で死因は衝撃によるものだったことが明らかとなっている。車両自体はヨーロッパの厳しいNCAPの衝突安全テストにおいて最高評価の5つ星を獲得しており、それでも構造物がリチウムイオンバッテリーを突き抜けたことが発火の原因だった。スマートフォンも同様だが、リチウムイオンバッテリーはそのような危険を内包しており、この点は、全個体電池などが実用化されない限り、避けきれない問題といえる。