新しいデジタルサイネージへの
積極的な取り組み

 2021年の暮れに新宿駅東口近くに設置されて話題を呼んだ、特定の角度から見ると猫やルンバが飛び出して見える3D街頭ビジョンも、韓国ではそれ以前から導入されていた。実際に機材の開発・製造を行っているのは中国企業だが、本国以外で設置した国は、韓国が最初だったようだ。

 というのも、韓国は新しい技術や製品に対する抵抗感が少なく、スマートフォン普及率の例からも分かるように、全年齢層がアーリーアダプター的な消費動向を持っているためだ。それゆえ韓国市場は、国外企業からも新たな技術や製品を試験的に投入して反応を確かめる場として捉えられているところがある。

 アパレルやアクセサリー系の問屋やテナントがひしめき合う東大門(トンデモン)のファッションビルの1つにも、新型コロナウィルス禍以前にはなかった新型の街頭ビジョンが設置されていたのだが、それはある意味で擬似的な3D街頭ビジョンを超える、リアルな3Dビジョンといえた。なぜなら、細かくブロック分けされたLEDパネルが、個々に物理的に前後しながら画像を表示する、本物の立体(構造)ディスプレイだったからだ。

「ウェーブスクリーン」と呼ばれるそれがウネウネと動いている様子は、少し離れた位置からはプロジェクションマッピング的な目の錯覚かとも思えた。だが、近づいてみると、実際にパネルが動いていることに驚かされた。これも作っているのは中国企業だが、韓国での反応を見たうえで、他国にも売り込んでいくのだろう。

韓国のファッションビルmaxtyleに設置された、物理的な立体感が特徴のウェーブスクリーン中国メーカーの製品だが、いち早く韓国のファッションビルmaxtyleに設置された、物理的な立体感が特徴のウェーブスクリーン Photo by K.O.

 ただし、正直なところインパクトの点では、擬似的とはいえ立体感に勝り、表示するイメージのバリエーションも豊富な3D街頭ビジョンのほうに軍配が上がるといわざるを得ない。また、可動部が多いのでメンテナンスも大変そうだ。しかし見る側の角度依存が少ないことや、既存のコンテンツもそのまま表示でき、専用コンテンツの制作も3D街頭ビジョンより簡単に行えそうな点ではメリットもある。設置場所の自由度も高く、特に近距離から見たときに迫力を感じるので、それぞれの特徴を生かして使い分けられていきそうだ。