出生率低下は日本の「経済・労働力・社会保障」にどんな影響を与えるか出生率を高めることは、さまざまな意味において、日本の重要な課題だ。しかし、それによって社会保障問題や労働力不足問題が緩和されると期待してはならない(写真はイメージです) Photo:PIXTA

岸田文雄首相が「異次元の少子化対策」に着手するなど、出生率の低下は日本の喫緊の課題とされています。最近の出生率の低下は、高齢化社会や労働力人口など、日本の将来にどのような影響を与えるのでしょうか。一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏の著書『2040年の日本』(幻冬舎新書)より抜粋して紹介します。

日本は世界で最も高齢化が進んだ国

 労働力の推移は、長期的成長率に大きな影響を与える。そして、労働力の状況を決めるのは、人口動態の変化だ。そこで、本節では、人口構造がどのように変わるかを見ることとしよう。

 65歳以上人口が総人口に占める比率を「高齢化率」と呼ぶことにしよう。日本の2020年の値は、28.7%だ。

 他の国を見ると、アメリカ16.6%、イギリス18.7%、ドイツ21.7%、フランス24.1%、韓国15.8%などとなっている(総務省統計局『世界の統計2022』による)。日本は、これらの国に比べて、飛び抜けて高い。