なぜ、顧客に「教わる」姿勢が大切だと思ったか

――初めてITを導入する企業にはどのように提案を行いますか。

山下 ベテラン社員の方が休んだり退職しても、今の人員で業務を回せるようにしましょうという提案を行います。その上で、他社のカイゼン事例を動画で説明すると共感を得やすいようです。使い方も、動画マニュアルを一緒に見ながら解説すると短時間で理解してもらいやすい。

 しかし、提案の際に一番大切なのは、お客さんに教わる姿勢だと思います。私にとって皆さんは、先輩経営者ばかりです。自分に足りない部分を認め、そこを補う知恵をいただくよう心掛けているつもりです。そうして初めて顧客の抱える問題を自分事化し、一緒に解決していけると思うのです。

藤本 苦しさや物足りなさを感じる点は、人によって違います。だからこそ、自分の弱い部分を正直に言える姿勢は大切です。自分のハードルが下がっていると、他者にも受け入れてもらいやすくなります。

山下 我究館で本音で語り合える仲間ができなければ、「今の自分はこんなものだ」という弱い部分を受け入れられるようにはならなかったと思います。小学校から続けてきた野球で高校の時にケガをし、思うようにプレーできなくなったこと、大学入試で浪人したことは、最初は誰にも言いたくなかった。でも、企業の面接でそれが自然に言えて、とても気が楽になったんです。

――我究館の仲間とは今でもつながりはありますか。

山下 実は、藤本館長にも参加してもらって、2022年7月に同窓生の有志で「合宿」を行いました。社会に出て皆いつの間にか、「会社の常識=社会の常識」になっていることに気付きました。

藤本 社会人になっても、同窓生で年に1~2回くらい「我究」するのもいいものですね。自分の弱い部分も開示して本音で話し合える仲間同士ですから、社会人経験を積みつつ、折に触れてお互いに「何をしたいか」を問い掛け続ける。そうすることで、次に進むべき道が明確になると思います。