メルセデスAMG・SL43メルセデスAMG・SL43 Photo by Akihiko Kokubo

 メルセデス・ベンツのSLクラスは、世界を代表するラグジュアリースポーツである。1954年に登場した初代の300SLガルウィングという名車を持ち出すまでもなく、歴代SLはつねにクルマ好きの憧れであり続けてきた。

 押しも押されもしないメルセデスのフラッグシップスポーツ。そんなSLの立ち位置が変わり始めたのは2000年代の半ば、先々代モデルのビッグマイナーチェンジ以降だった。ちょうどそのころAMGが悲願のオリジナルモデル、SLSを完成させた。SLSは専用開発のアルミシャシーにガルウィングドアを持つ、いわば300SLの再来。まさにその時、SLクラスは最高峰のスポーツモデルという地位から陥落してしまったのだ。

 SLSの生産終了以降もAMGからGTという上級スポーツカーが登場したため、SLはラインアップの2番手にとどまった。もちろんAMG・GTとはキャラクターがまるで異なっていたが、SLそのものが目立たなくなってしまったことは事実だった。