日本経済浮上の
処方箋とは

 日本や日本企業が沈まないようにするには、何か手を打たねばならない。選択肢は、以下のようなものであろう。

A )AIとものつくりの融合で再度フロントランナーへ
 AI時代の到来を期に、明治維新や第二次大戦後のように、これまでの秩序をいったん廃棄し、大幅なゆらぎを起こし、カオス化し、要素をバラバラにして、再秩序化をする際に、日本人の持つポテンシャルを活性化して、大変化を起こす

B)勤勉・貯蓄国家から投資国家へ
 成熟期の安定を維持しながらも、老いていく過去の経済大国として、ため込んだ資産を外国企業や外国で稼ぐ企業など、成長領域に投資して、お金に働いてもらう投資家の国となる。

C)和僑による拡日本化へ
 優秀な人たち(それも大量)に日本脱出を促す。サッカー選手や野球選手がそうであるように、企業も個人も自分の能力・スキルが生かせる場所に出て行き活躍する。そして、外国と日本をつなぐ役割を演じてもらい、それをテコに市場を拡大(入りと出を増やす)する。

 Aこそが王道だが、日本企業の組織にどのくらいのエネルギーが残っているか。これまでも何度かビジネス転換の画期があったはずだが、いずれも変化することなく乗り越えて、競争力のない企業もなんとなく生き延びてしまったという経緯がある。かりに欧米並みの高いROEが(半強制的に)義務付けられるなど、極端な圧力をかければ、ゾンビ企業は淘汰され、いったんビジネスの場は更地になるだろう。あるいは、そうした外圧はChatGPTなど生成型AIのビジネスへの侵食という形で実現するかもしれない。

 Bも良いと思うが、投資を「リターンもあるリスク」ではなく、「単なる危険」と考える日本人や日本企業の意識の大改革が必要だ。リスクへの誤解は、“リスク”という概念を輸入した際に、“危険”と訳してしまったことに起因するのかもしれないが、将来における不確実性は危険だけではないというリテラシーをそろそろわれわれも身に付けるべきであろう。

 Cは、短期的には優秀な人が出て行ってしまうので絶望的なように見えるが、長期的には得をする。会社においても、優秀な人材を自分の会社に縛り付けることなく、OB・OGが外部で活躍することが、結局は自社にとってもメリットがあることはよく知られている。優秀な人には将来、戻ってきてもらうなり、その人たちの人脈で別の優秀な人を紹介してもらうなり、新しい知見を教えてもらうなりすればよいのである。

 いずれにしても変化が必要だ。世界の俊英たちにまだ沈んでいないと誤解してもらっている間に、手を打たなければならない。

(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山 進、構成/ライター 奥田由意)