公安調査庁が示す
技術流出の7つの経路

 国内における技術流出例として、直近では、国内電子機器メーカーに勤務していた中国人男性技術者が2022年、スマート農業の情報を不正に持ち出したとして、警察当局が不正競争防止法違反容疑で捜査していたと報じられた。

 同中国人男性は、中国共産党員かつ中国人民解放軍と接点があり、SNSを通じて、中国にある企業の知人2人に情報を送信していたという。

 また、国外に目を向ければ、米司法省は5月16日、中国、イラン、ロシア、北朝鮮など国家レベルの敵対者が米国の機微技術を取得し、軍事用途や人権侵害に利用することを防ぐことを目的とした“ストライクフォース“の取り組みにより、輸出管理違反などを理由に5件の刑事訴追を行ったと公表した。

 5件のうち2件は、ロシア軍や諜報機関もしくは航空会社のために、米国の輸出管理法令違反となる機微な技術などの入手に関与していた事案で、3人の逮捕者が出ている。

 その他、中国籍の元アップルのエンジニアが同社の自動運転技術に関するソースコードを含む大量の書類を窃取したと疑われたが、既に出国してしまったという。

 国内外を見ても、特に中ロに関しては、定常的に技術窃取を試みる諜報活動などは活発に行われている状況である。

 この技術流出に関し、公安調査庁の「経済安全保障の確保に向けて2022」では、技術流出の経路について以下の通り示している。

1. 投資・買収
2. 不正調達
3. 留学生・研究者の送り込み
4. 共同研究・共同事業
5. 人材リクルート
6. 諜報活動
7. サイバー攻撃

 これら流出経路に関し、警察庁をはじめ、経済産業省などによるアウトリーチ活動が積極的に行われ、民間企業においても認知されてきたが、果たしてこれら技術流出に関してその実態はどのようなものなのだろうか。

 以下、違法な手段と合法的な手段に分けて例示して解説する。なお、捜査機関で広報されている事件以外の事案例は、全て私が民間に出て認知した事案である。