絵を描くだけじゃない!伝統の「女子美」で学ぶ、共創のデザイン

120年以上の歴史を持ち、女子美術教育の先駆けとして数々の女性クリエイターを輩出してきた女子美術大学に、2023年4月「共創デザイン学科」が新設された。日本唯一の学科名も、ビビッドな黄色を基調としたキービジュアルも、これまでの「女子美」のイメージと一線を画すものだ。新学科の構想を立ち上げ、新設と同時に学科長に就任した松本博子氏は、「本学科は、女子美の出島として、既存の美術・デザイン教育とは異なるところを狙っていきます」と話す。(聞き手/音なぎ省一郎、構成/フリーライター 小林直美)

絵を描くだけじゃない!伝統の「女子美」で学ぶ、共創のデザインPhoto by ASAMI MAKURA

ビジネスとテクノロジーを融合した新しいデザイン教育

――新学科は、キービジュアルもとても躍動的ですね。

 色のかけらがどんどんつながって、輪になって、広がっていく……。動きのあるパターンで「共創」を、明るく強い黄色で「強い心の女子をつくる」という教育テーマを表現しています。見た目はかれんなのに、踏み付けられても力強く育つタンポポのイメージです。

――新学科のアウトラインや、開設の狙いを教えてください。

「共創デザイン学科」という名前の通り、多様な才能や個性を巻き込み、対話を重ねて一つのものを創り上げる力を育てる学科です。世の中が複雑化すると、どんな課題でも1人の力で解決するのは難しくなります。デザインを主軸に、ビジネスとテクノロジーを融合した教育で多様な視点と「つなぐ力」を養い、これからの社会で活躍できる「共創型リーダー」を育てたいと考えています。

 私自身、インハウスデザイナーとして30年ほど企業に勤務した経験がありますが、ユーザーにとってどんなに良い製品、仕組みであっても、収益性などの経営視点を欠いたアイデアは提案だけで終わってしまいます。産学連携プロジェクトでも、ユーザー本位の提案というだけでは、企業が求める「収益性を満たしながら、いかにしてユーザーに価値を届けるか」というニーズは満たせません。ビジネス全体を構想する力を高める新しい教育形態が必要だと考えました。

――ビジネスの文脈としては非常によく分かりますが、高校生に伝わるでしょうか。

 新学科の構想を最初に提案したのは2018年ですが、最初は学内でも「高校生には理解できないのでは?」という意見が大半でした。一方、経営経験者からはすぐに賛同が得られました。特に、産学連携のパイオニアであり、ノーベル生理学・医学賞受賞の大村智名誉理事長からは強く後押しをしていただきました。

 一般向け説明会でも反応は良好です。ただ、最初に共感してくれるのは高校生より保護者ですね。ビジネスの前線にいらっしゃる方が多いからだと思います。高校生も、内容を丁寧に説明すると、がぜん興味を示してくれます。今の10代は「社会に貢献したい」というマインドが強いので、そこに刺さるのです。