銅相場は安値でも8400ドルを維持、23年後半に上昇に転じる2つの好材料Photo:PIXTA

米国発の金融不安で銅相場は3月に安値を付けたが、1トン当たり8400ドル台を維持した。足元は米利上げ長期観測などで下落しやすい状況が続くとみられるが、23年後半には上昇に転じる公算が大きい。その背景には2つの好材料がある。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)

中国需要の回復期待や米利上げ減速観測で
1月中旬にかけて急騰

 世界景気の先行指標として注目される銅相場は2022年7月中旬に1トン当たり6955ドルの安値を付けた後、上昇傾向で推移し、23年1月中旬には9550ドルと22年6月以来の高値を付けた。その後、3月中旬にかけて軟調に推移したが、安値でも8442ドルと落ち込みは軽微にとどまった。

 年初からの銅相場の動きを振り返ると、1月3日は、財新/S&Pグローバルが発表した12月の中国製造業PMI(購買担当者景況指数)が先に発表された国家統計局によるPMIと同様に低下し、拡大・縮小の判断基準となる50を下回ったことが売り材料だった。

 銅の最大消費国である中国での新型コロナウイルスの感染急拡大によって、コロナ関連規制の急速な緩和に対する楽観的な見解は後退して、銅は下落し、4日には8188ドルと22年11月末以来の安値を付けた。

 しかし、その後、銅相場は上向く。5日は、製造業集積地である広州で、今年、6.5兆元(約9450億ドル)超のプロジェクトが計画されていると報じられて買われた。

 6日は、12月の米雇用統計で賃金上昇率が市場予想を下回ったことを受けて、米利上げ減速観測から為替市場でドル安が進み、ドル建てで取引される銅は割安感から買われた。米ISM(供給管理協会)による12月のサービス業PMIが50を割り込んで金利低下やドル安につながったことも相場の押し上げ材料だった。

 8日から中国本土と香港との隔離なし往来が再開される中、ゼロコロナ政策撤廃による銅需要増加観測が強まって、9日の相場上昇幅は大きくなった。

 経済活動が鈍化する春節休暇(1月21~27日)を控えて、足元の中国の銅需要は低調なものの、先行き、需要が増加するとの観測は継続し、18日には9550ドルの高値を付けた。

 その後は上値が重くなった。それまでの上昇で利益確定の売りが出やすくなり、世界的な景気減速、中国需要の不透明感、ドル高などが弱気材料として意識された。一方で、相場を下支えする材料もあった。

 ペルーではカスティジョ前大統領の罷免と拘束への抗議活動が続き、銅の供給減少が懸念された。25日に米鉱山大手フリーポート・マクモランは、国内で労働者を見つけるのが困難で、グリーンエネルギー移行に必要な銅生産の制約要因になっていると警告した。

 また、開発の遅れによって30年までのチリの銅生産の伸びが従来想定よりも緩慢にとどまるとのチリ銅委員会の報告が発表された。