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保田隆明 大学院発! 経済・金融ニュースの読み方

非公開企業のサントリーにメリットが大きい、キリンとの経営統合

保田隆明 [神戸大学大学院経営学研究科准教授、昭和女子大学非常勤講師]
【第30回】 2009年7月23日
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 先週メディアをにぎわしたキリンとサントリーの経営統合に関して、その背景や経営統合後の筆頭株主がサントリー創業者一族になるという話は、先日ザイオンラインのコラムで書いたが、今回は、サントリーが普通に株式公開をして上場企業になる場合と比べてのメリットについてまとめてみたい。

オーナー企業の上場に伴う
株式オーバーハングを回避

 オーナー企業の上場、あるいは、子会社上場に付きまとう問題に株式オーバーハングの問題がある。これは、上場後も大きな持ち分を保有するオーナー、あるいは親会社が、いずれ株式を売り出すであろうとの憶測が株価の上値を抑えるという問題である。オーナーや親会社が株式を売り出せば需給バランスが崩れて、売り圧力が強まるというものである。サントリーは9割を創業家が保有する状況ゆえ、このまま普通に上場してもその持分を下げていくには相当な期間を要する。しかし、もしキリンとの経営統合が実現すれば、オーバーハングを回避しながら、持ち分を3割~4割にまで落とすことが可能である。

 また、もしサントリーが単独上場企業となった後、いざ創業家が持ち分の売却を行う場合は、後述する後継者問題も絡めて、内外で不必要に様々な憶測やノイズを巻き起こすこととなり、経営の邪魔をしかねない。

後継者問題の解決

 オーナー企業の場合、その後継者をどうするかという問題が常に付きまとう。オーナーの存在が企業価値の一部に組み込まれてしまっているケースも多く、オーナーが第一線から退くと株価が下がるケースもある。サントリーほどの大企業の場合は、企業価値に占めるオーナーや創業家社長の価値の割合はさほど高くはないかもしれないが、トヨタ自動車で久しぶりに豊田家出身の社長が登場すると大きくメディアでも取り上げられたように、大企業においても、創業家の存在感、影響力はいまだ大きいのが実際である。サントリーのように、未上場企業の場合はなおさらである。

 サントリーが株式公開を行って上場企業となったとしても、この後継者問題を即座に解決することはできないが、キリンと経営統合をすれば、上場を果たすと同時に後継者問題まで解決してしまうことができる。トヨタの例で見られたように、たとえキリンと経営統合をした後でも、サントリー創業家の人材がどのポストに就くかに関しては引き続き高い関心を集めることとなるだろうが、サントリー単独の場合に比べると相当和らぐことは間違いない。

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保田隆明 [神戸大学大学院経営学研究科准教授、昭和女子大学非常勤講師]

1974年生まれ。神戸大学大学院経営学研究科准教授、昭和女子大学非常勤講師。リーマン・ブラザーズ証券(東京/ニューヨーク)、UBS証券東京支店で投資銀行業務に携わる。その後、起業、投資ファンド運用等を経て、10年より小樽商科大学大学院准教授、14年より昭和女子大学准教授、2015年9月より現職。雑誌、テレビや講演で金融・経済をわかりやすく解説する。著書は「あわせて学ぶ会計&ファイナンス入門講座」「実況LIVE 企業ファイナンス入門講座」(ともにダイヤモンド社)ほか多数。早大院商学研究科博士後期課程満期退学。
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仕事と両立しながら大学院に通い始めた保田隆明が、大学院で学ぶからこそ見えてきた新しい視点で、世の中の「経済・金融ニュース」をわかりやすく解説する。

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