昔はライブハウスの動員数や熱量という感覚部分が強かったが、今はデジタル化でYouTubeやInstagramなどフォロワー数(人気度数)で分かる。このため「フォロワー数が多いアーティストと契約すれば短期的には売れるかしれないが、発揮できていない魅力や潜在的な能力をどこまで見極められるかが重要になる」と藤倉氏は指摘する。

 潜在能力の見極めのために、以前は「妄想3原則」を重視していた。どのアーティストも新人のときは大スターではない。ライブハウスに20人しか呼べないアーティストを見たとき、東京ドームでのライブ、紅白歌合戦での歌唱、ミリオンセールス(100万枚売れる)のどれか一つを妄想できるかを大事にしてきたという。

 この原則が、デジタル時代の今では4つの“超える”基準にアップデートした。

 これは、「世代」、「国境」、「時代」、「予想」のいずれか一つを超えられるかを重要視する。特に国境はストリーミングの台頭で音楽ビジネスから消えつつあり、社員には「国境を超える妄想を抱けるか」を問いかけている。

Adoや藤井風に共通「4つの超」、ユニバーサルミュージック9年連続・増収増益の極意松任谷由実の昨年のベスト盤は「時代」も「予想」も超えた

 世代についてもそうだ。バンドのback number(バックナンバー)は10代に加え、NHKの朝ドラ主題歌に抜擢され60代の認知も進んだ。松任谷由実が昨年出したベスト盤は、1970年代以降6年代連続1位を達成したが、その中には50年前の曲も入っている。次の時代にも支持されているわけで、まさに時代を超え、予想も超えた。