新NISAのキーワードは
「中間所得層の資産形成促進」

 今回の制度改正の一番重要なキーワードは前述したように「中間所得層の資産形成促進」にある。1800万円の上限額では富裕層にとってたいしたメリットはない。逆に低所得者層の人たちにとっては、現行のつみたてNISAの年間40万円という枠でもなかなか利用するだけの余裕がないというのが現実である。

 年間40万円というのは月額にすれば3万3000円ぐらいになる。低所得者層の人達にとって、今の生活の中から毎月3万円以上も積み立て投資に回すなどということはかなり難しいと言って良いだろう。

 したがって、今回の制度拡充とはまったく関係なく、賃金の底上げをしていく政策は非常に大事だといえる。ただ、それはそうとして、やはり層としては最も多い中間所得層の資産を増やしていくことは極めて重要である。資産所得を倍増しようということなのだから、これは当然だろう。

 さらに言えば、制度の考え方には以下2つの特徴が見て取れる。

(1)積み立てによる投資が中心
(2)長期による資産形成が前提

 成長投資枠はあるもののそれは株式の短期売買用に用意されたものではない。若いうちはなかなか積立額を増やすことができなかった人たちが一定の年齢になってきてキャッチアップできるようにということで、設定されているのがそもそもの狙いである。

 したがって、制度の中心はあくまでも「つみたて」ということになる。

(2)の長期による資産形成は、資産形成の基本と言って良いだろう。リスク商品は短期的にはブレもあり、損失が生じる可能性も高いが中長期で考えた場合、着実に資産が増えていくことが期待されるからだ。今回、投資期間も非課税期間も恒久化され、無期限化されたという狙いもここにある。

 若い人であれ、シニアであれ、NISAの正しい使い方はやはり長期での資産形成にあるのは間違いないだろう。