中国国内で渦巻く「政府への忖度」
夏前に団体旅行の再開はあるのか?

 中国人をターゲットにしていた日本のインバウンド事業者へ話を聞くと、夏前には、団体旅行が再開されるとのうわさを耳にしたそうだ。

 しかし、中国の旅行会社へ取材すると、「業界内では(日本への)団体旅行解禁の話は出ていない。今夏の再開可能性は低く期待できない」とのことだった。

 では、コロナ禍前から6~7割が個人ビザでの訪日だったにもかかわらず、実際に訪日している中国人客が1割以下にとどまっている理由は何なのであろうか。

 中国国内の声を聞くと、旅行会社や国民の中国政府へ強めの忖度が働いている現状が浮かび上がる。

 ある日系企業の中国人従業員は、「団体旅行を禁止しているということは、その国への渡航を中央政府は推奨していないことを意味します。みんなコロナ禍での強烈な統制を体験したので、政府の意向に反して日本へ行くことで自身や家族が不利益を被ることを強く警戒しています」と話す。

 それでも日本の新型コロナ対策が5類へ移行した5月以降、日本から中国への空路は増便され、高止まりしていた航空券も下がり始めている。

「今年後半にかけて個人ビザでの中国人観光客は多少増えると予想されますが、過去最多だった19年の2~3割程度になるのではないでしょうか」(遼寧省の旅行会社)

 中国政府にとって海外旅行の是非も重要な内政手段のため、中国政府は、今後もいろいろな理由を挙げて団体旅行禁止国への解禁を先延ばしすると思われる。

 コロナ禍を経て、日本人以上に空気を読むようになったともいわれる中国国民。空気をしっかり読んで、旅行先を選んでいきそうだ。

(筆名 筑前サンミゲル/5時から作家塾®)