制度を変更するには
時間がかかる

 退職金とか年金という制度において最も重視するのは「大きく不公平にならないこと」である。例えば1年違っただけで制度がガラッと違ってしまったり、今までの制度において課税されると思っていたのにある日突然変わってしまったり、ということは通常あり得ない。

 厚生年金の支給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられることが決まったのは1989年である。つまり今から34年も前のことなのだ。しかもその引き上げ自体、まだ完全に終わっていない(女性の場合だと、全ての人の支給開始年齢が65歳になるのは2030年のことである)。

 つまりこうした制度は急に実施すると大きな社会的混乱を招くことになるため、さまざまな経過措置や特例が設けられて極端な不公平が生じることのないように、配慮を重ねて実施されるのだ。

 それに現時点ではまだ具体的に何も決まっておらず、これから議論を始めようということである。恐らくは年末に開かれる与党の税制調査会で議論されることになるだろうが、実際に制度改正の内容が決まるまでにはまだ紆余(うよ)曲折もあるだろうし、決まった後の実行までにも相当時間がかかることが予想される。

 そのため、向こう5年や10年で退職を迎える人にとっては恐らくあまり影響はないだろう。だから過剰に心配する必要はないのだ。