中国不動産大手の中国恒大集団Photo:CFoto/JIJI

中国不動産大手の中国恒大集団が、米国で破産法を申請した。不動産不況だけでなく、経済再開後の成長鈍化や物価低迷など、中国経済の不振が顕著だ。そこでダイヤモンド編集部は、中国経済に詳しい専門家3人による緊急鼎談を行った。参加者は柯隆・東京財団政策研究所主席研究員、河野龍太郎・BNPパリバ証券経済調査本部長チーフエコノミスト、斎藤尚登・大和総研経済調査部長。見えてきたのは、バブル崩壊後の日本と今の中国との意外な共通点だ。中国も日本の「失われた30年」と同じ道をたどるのか――。前後編の2回にわたって鼎談全文をお届けする。(構成/ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)

23年は5%成長達成の見通し
それでも景気が悪化する根本理由

――中国の2023年4~6月期の実質GDP成長率は前期比0.8%増、年率換算で3%強でした。23年の5%前後の成長率目標は達成可能ですか。

 それに近い成長率は達成できるでしょう。ただ、達成できても十分ではありません。政府の公式統計でも24歳以下の若者の失業率が20%を超え、21.6%です。

 実はこの統計には問題があります。

 ここでいう失業率は都市の住民票を持っている人のみが対象です。3億人前後の出稼ぎ労働者が含まれていません。出稼ぎ労働者の6割を若者が占めます。それを合算すると、若者の失業率は40%を超えています。

 その原因はコロナ禍の3年間で約400万社が倒産したためです。倒産した理由は二つです。一つは、日本の中小企業信用保証制度に当たる制度が中国にはないことです。二つ目は、日本ではコロナ禍で中小企業に対して給付金が支払われましたが、中国は1人民元も支払っていないことです。その上でゼロコロナ政策を徹底しましたから倒産が増えたのです。

齋藤 第1次コロナショックの20年の実質成長率が2.2%、21年が8.4%だったので2年間を平均すると5.3%成長でした。第2次コロナショックの22年は3%でしたから、2年平均で5%を超えるには23年は7~8%に回復してほしいところです。

 しかし、23年は5.5%に届くか届かないぐらいだとみています。22年と23年の平均は4%強になりますから、20年と21年の平均と比べると1%ポイント低下することになります。一段と景気の状況は悪くなっています。

河野 お二人と同じように5%成長は達成できるとみていますが、やはりそれで十分なのかということが問題です。まず22年はロックダウンが繰り返され3%の低い成長でした。

 22年12月のゼロコロナ政策転換後、爆発的に新型コロナウイルスが拡大しその後に経済再開が起きました。しかし、世界中が期待したほどにはコロナ後の繰り越し需要が顕在化しなかった、それどころか息切れしています。

成長率目標である5%は達成の見通しだが、中国経済は勢いを欠く。その原因はどこにあるのか。次ページ以降、識者3人が分析していく。