発電時の「CO2排出量見える化」ビジネスの勝算、元東電マンの気鋭ベンチャーが構想Photo:PIXTA

元東電マンが率いるスタートアップ、電力シェアリングが脱炭素化社会を見据え、「電力が作られる際の二酸化炭素(CO2)排出量の見える化」に取り組んでいる。今後普及が見込まれる電気自動車(EV)の昼充電促進などに生かすという。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、この取り組みのビジネスとしての勝算を探る。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

環境省の委託事業として今夏
「EV昼充電」の実験スタート

 元東電マンの酒井直樹CEO(最高経営責任者)が率いるスタートアップ、電力シェアリングが今夏、環境省の委託事業として「電気自動車(EV)の昼充電促進」の実証実験を始めた。

 狙いは、近い将来にEVが普及した際に起こりかねない夕方帯の充電集中の回避や、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの有効利用などにある。

 酒井CEOは1987年東京電力(現東京電力ホールディングス)入社。在籍時は人事部で人事・企画担当、アジア開発銀行への派遣などを経験した。2017年に退職し、同年に電力シェアリングを創業した。

 さて同社が7月に第1弾の実証実験として実施した内容は以下の通りだ。

 EVのユーザー300人を2群に分け、アプリを通じてEV充電の動向を観察した。1群には充電時間帯別の電気の発電における二酸化炭素(CO2)排出量推計値を示したり、昼充電にポイント付与をしたりした。対象群にはただ単に充電の記録を付けてもらった。

 この実験の肝は、充電時間帯別のCO2排出量推計値の提示であり、電力シェアリングの独自の推計方法を用いた。

 酒井CEOは「詳細はまだ発表できないが、2群には明確な差が出た」と成果を誇る。今後、テスラ車ユーザーでつくる一般社団法人テスラオーナーズクラブジャパンやEV充電インフラ設置事業者などの協力を得ながら、規模や方法を変えて実験を進めていく予定だ。

 そして電力シェアリングは環境省から委託された実証実験とは別に、昼間の時間帯の充電に関連した事業化構想も練っている。

 元東電マンのCEOはどんなビジネスを考えているのか?