中国の処理水「過剰反応」へ3つの対抗策、内閣府“廃炉・汚染水対策チーム”元アドバイザーが提言処理水の海洋放出中、タンクの水位や流量、放射性物質トリチウム濃度などを監視する遠隔操作室=2023年8月27日午後、福島県[代表撮影] Photo:JIJI

福島第一原発の処理水の海洋放出に関して、内閣府「廃炉・汚染水対策チーム事務局」のプロジェクト・アドバイザーを務めた筆者が、中国の過剰反応や風評被害を防ぐためにも早急に追加すべき三つの対応を提案します。(トライオン代表 三木雄信)

処理水への中国の過剰反応に
早急に追加すべき三つの対策とは

 福島第一原発の処理水の海洋放出が8月24日に始まりました。国内での風評被害が懸念されていた一方、事態は予想を超えて、中国では日本産の海産物の輸入禁止や日本製品の不買運動にまで拡大しています。

 筆者は、2013年12月から内閣府「廃炉・汚染水対策チーム事務局」のプロジェクト・アドバイザーを務めていました。当時、「また福島第一原発で汚染水が漏れた」といった報道が続いていたので、その対応にプロジェクト・マネジメントの観点でアドバイスが必要とされたからです。(※編集部注「汚染水」という言葉を当時のまま記載しています)

 アドバイザー着任以降、実態を確かめようと、福島第一原発の爆発した建屋の原子炉のごく近くまで、マスクに防護服を着用して入ったこともあります。そして、福島では郡山のJビレッジで行われる現地調整会議に参加し、東京では土曜と日曜の午前9時から午後5時まで東京電力本社で行われるプロジェクト定例会に詰めるというハードな2年余りを過ごしました。

 プロジェクトは関係各所の尽力の結果、発生する汚染水の量を1日約500立方メートルから大幅に減少させることに成功しました。また、汚染水の漏洩が多発したボルト式の旧型タンクから安全性の高い溶接型タンクへ入れ替えを実現し、安全に汚染水を保管することが可能になりました。(※編集部注「汚染水」という言葉を当時のまま記載しています)

 その後、このプロジェクトからは離れていましたが、今般のALPS処理水の海洋放出について思うところがあります。そこで、守秘義務や公開情報の範囲でしかお伝えできませんが、私の考えを述べたいと思います。

 まず、「処理水の海洋放出を関係者・世論のコンセンサスを形成し実施に漕ぎ着けること」をゴールとするプロジェクトに対して、プロジェクト・マネジメントの観点で分析すると、基本的にはよく練られた計画であり着実かつ丁寧に進めてきたものだと評価できるでしょう。しかし、今回の中国のような過剰な反応が出てきている以上、現状プランでは不足があることも確かです。そこで、早急に追加すべき対応を三つ提案します。