「もうすぐ崩壊する」と言われながら
一向にはじけない不動産バブル

 そして、私が特に問題視しているのが「不動産バブル」に関するバイアスだ。

 故・安倍晋三元首相による経済政策「アベノミクス」が始まった12年末以降、マンション価格は7割以上高くなった。この価格高騰を「バブル」とする報道もよく見られるようになった。バブルはいつか崩壊するものだが、それが「いつ、どんなきっかけで起こるか」をはっきり予測できる報道関係者・有識者はいるのだろうか。

 というのも、数年前から「コロナショックに伴って不動産バブルが崩壊する」と言い始める有識者が増えた。似た趣旨の雑誌特集もよく見かけるようになった。

 しかし実際は、コロナ禍に入ると以前よりも不動産価格は上昇した。通説とは真逆のことが起こったのだ。景気と不動産価格の相関関係はほぼないことの証左だ。にもかかわらず、明確な根拠がないまま「不動産価格は近いうちに急落する」とあおるような報道や、それを真に受ける人がいまだに見受けられる。これはメディア・市民双方のバイアスの産物ではないだろうか。

 ちなみに、アベノミクスによる金融緩和で物件価格が高騰したのは確かだが、金利が下がった分、トータルでは買いやすくなった側面もあることを忘れてはいけない。「金融緩和のせいで家を買いづらくなった」とは一概には言えないので、この思い込みにも注意が必要だ。

 そして、本連載で過去に解説した通り、不動産事業者への資金の流れは「日銀短観」で確認できる。もちろん「バブル崩壊」は突然起こるので、100%の予測は難しいかもしれない。だが日銀短観の数値を追っていくと、ある程度はマンション価格の動向をつかむことが可能になるのだ。

 ここで、バブルが崩壊するという論者に問いたい。「それは何年後に起こるのですか?」と。バブル崩壊が「まもなく起こる」と言われ始めてから、その到来時期は引き延ばされ続け、少なくとも5年以上経過しているように思える。