ダイヤモンド社は2013年5月1日に創立100年を迎えることになりました。雑誌を追う形で始まった書籍事業も、ビジネスジャンルを中心に刊行点数は1万点を優に超えています。書籍は、その時々の経済環境や流行など世相を色濃く反映しているものが多数を占めますが、時代を超えて読み継いでもらいたい名著が、私達の書棚にはたくさん並んでいます。
本連載は100周年を記念し、普遍の名著と呼ばれる作品から、今だからこそ読みたい隠れた名作まで、有名無名織りまぜた100冊を紹介していきます。
第1回は、私たちの前にまた出現しうる「バブル」の本質を捉えた名著です!

金融緩和への期待が生んだ
ミニバブル現象

「金融緩和」「財政出動」「経済成長」の3本の矢を放つことで景気浮揚を目指すアベノミクスの効果に、誰よりも一番驚いているのは当の安倍晋三首相かもしれません。

 安倍氏が自民党総裁に就任した昨年9月26日の日経平均株価は8906円でした。自民党が大勝した総選挙翌日の12月17日には、9828円まで上げ、第2次安倍内閣発足以降はウナギ登り。今年3月4日にはリーマン・ショックによる株価暴落後の最高値を塗り替え、1万1652円を付けました。たった5カ月でなんと3割以上も上昇したのです。

アベノミクスで日本は再びバブルに踊る?<br />世界的経済学者が世に問うた「警告の書」『新版 バブルの物語 人々はなぜ「熱狂」を繰り返すのか』(左)
2008年12月発行。右は1991年に刊行された旧版です。デザインの変更のほか、サブタイトルも変わっています(旧版は「暴落の前に天才がいる」)。
新版の編集担当によると、「かねてからもう一度世に送り出したいという気持ちがあったが、2006年にガルブレイス氏が死去し、また世界がリーマン・ショックに直面する中でさらに思いを強くして刊行した」とのこと。帯文にある「ついに復活!」の太文字にそれが表れているようです。
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 いまや株式市場はミニバブル化の様相を呈していますが、もちろんこの背景には「大胆な金融緩和」への期待があります。金融政策において白川方明・日銀総裁の尻を叩き続けた効果はてきめんだったということです。

 さらには、次期日銀総裁および副総裁に筋金入りの金融緩和論者を起用することで「2%のインフレターゲット」を実現する体制を固めようとしているのはご承知のとおり。総裁就任が確実視されている黒田東彦氏は「ヘリコプター・ベン」ならぬ「ヘリコプター・クロダ」の異名を奉られることで、「ベン」ことベン・バーナンキFRB(米連邦準備制度理事会)議長の支持を得られること請け合いです。バーナンキ氏はかつて、日本のデフレ脱却策に言及して「紙幣をどんどん刷ってヘリコプターからばら撒けばいい」などと訴えたこともあるからです。