好評の「資さんしあわせセット」好評の「資さんしあわせセット」。人気No.1の「肉ごぼ天うどん」と不動の人気を誇る「カツとじ丼」、年間540万個を売り上げる「ぼた餅」がミニサイズになって一堂に会する夢のセット。2023年8月からは「カツとじ丼」「たれカツ丼」「カツカレー」「天丼」「牛とじ丼」(いずれもミニサイズ)から選べるように 写真提供:資さん

1976年創業、北九州のソウルフードとも言われるうどんチェーン「資(すけ)さんうどん」が好調だ。2023年8月には、岡山に初出店。11月には関西進出を控えている。3代目社長の佐藤崇史さんは、創業家一族でも従業員でもなく、元々資さんうどんのファンだったという人物で、業務改革推進本部長の伊藤英記さんとともにDXを推し進めている。ECサイト開設、LINE公式アカウント開設、ファンミーティング開催、「資にゃん」導入……“顧客視点のDX”とはいったい何なのか。(ノンフィクションライター 酒井真弓)

黄金の出汁ともちもちの麺、「資さんうどん」が
北九州のソウルフードと呼ばれるまで

 資さんうどんは、1976年、北九州は八幡製鉄所に程近い港町で生まれた。もともとは創業者・大西章資さんが「安心しろ、もうかっているうどん屋だ」と言われて譲り受けた一軒の店。フタを開けてみれば、閑古鳥が鳴く、とても繁盛店とは言い難い店だった。

 理由は明白で、自信を持っておいしいとは言えなかったことだ。大西さんは毎日店に立ち、「九州のここのうどんがうまい」と言われれば九州中を巡り、「うどんといえば讃岐だ」と言われれば、讃岐にも勉強に行った。こうして試行錯誤を重ね、2年がかりで今の資さんうどんの原型にたどり着いたという。

 資さんうどんの特徴は、サバや昆布、シイタケなどからとった旨味たっぷりの黄金の出汁。濃いめでガツンとくるその味は、製鉄所で肉体労働に汗する人々を思って生み出されたものだ。麺にもこだわりがある。福岡のうどんと言えば柔らかい印象だが、資さんうどんはもちもちして弾力がある。「体力勝負の肉体労働で働く人たちは、柔らかいうどんでは満足できないだろう」と考えたのが理由だとか。

 メニューは100種類以上ある。一般に、飲食店はメニューが少ない方が味もオペレーションも安定するが、毎日では飽きてしまう。連日通ってくれる人が「食べたい」と言った料理を次々と作っていった結果、いつの間にか100種類以上になっていたという。さらに3交代制で働く人たちに合わせ、コンビニが24時間営業になる前から24時間営業を続けている。