お金はコミュニケーション・ツールの一つ

 むしろ一般的なのは、「お金はお金であり、絶対的なもので、他のものとは比べるべくもない」と捉え、思考停止に陥った状態かもしれない。

 だが、その考え方は間違っている。

「お金はメディアのひとつでしかない」<br />と知れば、呪縛と偏見から解き放たれる

 お金は絶対的なものではない。お金は、人と人とがコミュニケーションする手段(メディア)のひとつでしかない。しかし、それが“数字”という世界中すべての人が理解可能なメディアであるがゆえに、極めて強力な存在であるにすぎない(右図)。お金が絶対的な存在でなく、数あるメディアのひとつだからこそ、他のメディア-----たとえば、言語や宗教、ボディランゲージ、時には笑顔ひとつすら、お金の代わりになるのである。

 つまり、お金と代替しうる存在は無数にある。人がコミュニケーションを行うためのメディアには、宗教のように、文化や思想など深い文脈を伝えられるが、特定の信者など限られた領域でしか通用しないものもある。またお金のように、数字であるがゆえに背景の文脈は伝えられないが、世界中の誰もが理解できるものもある。

 お金は強力だが、絶対的存在ではない。それを理解しているだけで、僕たちはお金の呪縛から放たれ、お金に対する偏見から少し距離を置いて、冷静な目でそれを捉え直せるようになる。そして、その冷静な視点こそ、僕たちがお金と良い関係を築くきっかけとなる。

 それでは、お金はどうやってでき上がっているのか。ここで整理しておこう。