日産自動車がジャパンモビリティショーで展示したコンセプトカー「ハイパーツアラー」日産自動車がジャパンモビリティショーで展示したコンセプトカー「ハイパーツアラー」 Photo by Tkayuki Miyai

10月28日から一般公開された「ジャパンモビリティショー2023」で、全固体電池を搭載した電気自動車(EV)のコンセプトカーを展示した日産自動車。中国勢の低価格なEVが急速に普及する中、日産は電池の性能向上で巻き返しを図ることができるのか。同社のパワートレイン と EV技術開発を担当する平井俊弘専務執行役員に話を聞いた。(ダイヤモンド編集部 宮井貴之)

全固体電池は従来バッテリーの半額に
リン酸鉄リチウムイオン電池も活用

――ジャパンモビリティショーで発表したコンセプトカーであるEVミニバン「ニッサン ハイパーツアラー」に全固体電池を搭載した狙いは。

 全固体電池は、液体リチウムイオン電池に比べて出力が大きいので、同じ容量(放出する電気量)のバッテリーを搭載しようとした場合、パッケージングが有利になります。クルマをフラットにすることが可能なため、重心を低くして高い走行性能を発揮できます。移動時間を同乗者と楽しむことができるEVミニバンのようなクルマこそ、全固体電池の強みを発揮できると考えています。

――日産は2028年度に全固体電池搭載したEVを市場へ導入することを表明していますが、課題と感じている点はどういったところにあるでしょうか。

 21年に電動化戦略の方針を発表してから材料選定は終わってきています。少し小さいバッテリーで十分に性能が発揮できることは確認しています。ここからは、来年に向け横浜工場(横浜市)内でパイロットプラントを建設しています。そこで実際の大きさで、製造技術開発をやっていきます。全固体電池がなかなか世に出ないのは量産化が課題だからです。製造方法を一つに決めず、複数の工法を進めながら最適な造り方を見つけていきたいと思います。

次ページでは、日産の電動化推進の鍵を握る平井専務にEVのバッテリー戦略や現在販売が伸び悩む中国市場のテコ入れ策について語ってもらった。