植田和男・日本銀行総裁はYCCの再柔軟化を決定した。金融政策正常化に向けしたたかに歩を進めつつある植田和男・日本銀行総裁はYCCの再柔軟化を決定した。金融政策正常化に向けしたたかに歩を進めつつある 写真:日刊工業新聞/kyodonews

日本銀行がYCC再柔軟化に踏み切った。金利上昇と円安進行に追い込まれる中、政府やアベノミクス支持者への配慮がうかがわれる苦肉の策だ。しかし、金利のある世界への一歩であることは間違いない。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)

二律背反ともいえる命題に答えを出した
今回のYCCの再柔軟化

「私どもの物価見通しが上振れてきたこと、米国の金利上昇が非常に大幅でそれがわが国の金利にも及んできたことが今回の措置の背景にある」と、植田和男・日本銀行総裁は語った。

 YCC(イールドカーブ・コントロール、長短金利操作)の再柔軟化を決定した10月31日の金融政策決定会合後の記者会見での、政策修正の理由を巡る発言である。

 生鮮食品を除くコア消費者物価指数の上昇率は、2023年9月まで18カ月連続で日銀の物価目標である2%を超えている。加えて、物価の基調をより反映する、生鮮食品とエネルギーを除くコアコア指数の上昇率は4%台で高止まりしている(下図参照)。