半導体Photo:PIXTA

来年のエネルギー業界の重要なテーマについて国内と海外でそれぞれ5つずつ選び、「2024年エネルギー業界の超重要テーマ」として、2回に分けてお届けする。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では前編として、国内のエネルギー業界を展望する。(KPMGコンサルティング プリンシパル/エネルギーアナリスト 巽 直樹)

ウクライナ情勢で日本は
エネルギー安保「われに返った」

 日本のエネルギー政策は「S+3E(安全性+自給率・経済効率性・環境適合)」を基本としていることは、この業界人の誰もが知るところだ。特に3Eの間でバランスを取ることに、オイルショック以降の約半世紀にわたり、関係者は腐心してきた。

 東日本大震災以降、電力システム改革の進展と再生可能エネルギー導入の拡大に伴い、3Eのうち、この10年余りは経済効率性と環境適合が優先され、3Eのバランスが崩れる傾向にあった。

 このような状況のなか、近年の資源価格高騰やウクライナ情勢の発生により、自給率(エネルギー安全保障)が見直された。一次資源に乏しい日本において、結果的にエネルギー安全保障を相対的に軽視していた状態から、われに返ったというほうが正確であろう。

 最近よく話題に上る「2024年問題」は、19年の働き方改革関連法で定められた時間外労働の上限規制(年間960時間)を完全施行することにおいて、中小企業には24年までの猶予期間を設けていたことに起因する。

 エネルギー業界でこの問題が語られることは多くはない。エネルギー関連では例えば、物流・運輸業界において、これを機に人手不足問題と同時に環境問題における積年の課題を解決するべきだという提言の類いが耳に入る程度だ。

 しかし、建設業界や物流・運送業界などでは人手不足に拍車をかけることが懸念されており、これらの業界に依存した設備形成やロジスティックに影響が及ばないはずもなく、エネルギー業界でも対策を考えておくべきだろう。

 ここでは労働問題における「2024年問題」を検討することが目的ではないが、これらはコストプッシュ・インフレを加速させる要因でもあり、結果的にエネルギーコスト上昇を促す可能性もある。こうしたマクロ経済の状況を念頭に起きつつ、国内エネルギー業界の「2024年問題」を見ていこう。