第1回:農業の変革「Agri X」は、「AgriTech」にとどまらない!新たなエコシステムを狙うベンチャー群の出現アイガモロボ(写真左)の制御部分の底には2本のスクリューがあり、それが回転して水流でトロトロ層がかき混ぜられ、水が濁って光が届かなくなり、結果的に抑草される

そんなに動くと、植えた苗が倒れたり抜けたりしないかと心配になるが、それは無用だ。アイガモロボを発明した有機米デザインの中村哲也取締役は、「有機栽培の水田を観察していると、アイガモでも白鳥でも苗をまたぎながら悠然と水田を泳ぎ回っています。それだけ苗はしっかりと植えられているということです」と解説する。

トロトロ層の土がかき混ぜられて水が濁ると、光がトロトロ層や底部の土に届かなくなり、遮光効果で雑草が発生しにくくなるだけでなく、水中に酸素が供給されることでメタンガスの発生も抑えられる。ヒエやコナギなどの単年草は浮き上がったり枯れたりし、出芽した多年生の雑草の球根なども浮き上がってくるのだ。田んぼの中をくまなく動きジャンボタニシを払い落とすので稲の食害も抑制され、稲の生育も良くなる。 有機米デザインが全国各地で展開してきた実証実験の写真を見ると、アイガモロボが入ったエリアと入らなかったエリアでの稲の生育状況の違いは明白だ。ちなみに2022年には全国34都府県で210台の実証実験が行われた。ある農場では、1平方メートル当たりの雑草の量が26.4グラムから2.1グラムへ、つまり10分の1以下に抑えられた。 

第1回:農業の変革「Agri X」は、「AgriTech」にとどまらない!新たなエコシステムを狙うベンチャー群の出現実証実験での抑草の実際。アイガモロボを使った水田(左)と使わなかった水田(右)では抑草の量も稲の生育も明白に差が出ている 

かつては、有機米栽培の水田ではアイガモだけでなくコイやフナを放したり、子どもたちに水田を踏んでもらったりするなどの対策を取ってきた。現在主流である機械除草は、 田植えから3週間で3~5回は繰り返さなければならず手間が掛かることから、これが有機米栽培の大きな壁になっていた。