株価上昇の要因とは?
後から探すとたいてい見つかる

 意外ではあっても、株価の動きに理由はある。予測は難しいけれども、後からの説明はできるのが相場業界の強いところである。

 今回、大変良い説明を提供している、日本経済新聞の篠崎健太記者の記事「日経平均、一時33年ぶり高値 マネー再び日本株へ」(『日本経済新聞』11月20日電子版)を参考にさせてもらいながら、要因を整理しておこう。

 今や、新聞記事のスクラップを行う人は激減しているだろうが、筆者が思うに、この記事はスクラップして、しばらく手元に置いておく価値がある。特に、今後しばらくして株価が低迷するようであれば、読み返してみて「戻り」の要因を再確認するのだ。

 さて、株価の説明のためには、企業の業績から見るのがオーソドックスだ。記事はまず、日本の小売企業がコスト増を吸収する値上げを実現できたことと、外需企業の業績が上方修正ラッシュであり、「日本企業のファンダメンタルズの堅調さが確認できた」というヘッジファンドマネージャーの意見を紹介している。

 小売価格の上昇は、少し気を付けて街を歩いて生活していたら気が付くだろうし、業績修正はインターネットか新聞でチェックしていれば、投資家なら気付いているはずだ。円安の効果は大きい。ただし、これらは11月に入って3週間の間に目立って生じたものではない。

 なお、この後に「日経平均は年内に3万5000円まで上昇余地がある」とするファンドマネージャーの見解が紹介されているが、この部分に情報は含まれていない。「余地」はあるし、勢いはあってもおかしくはない。答える側も記事を書いている人も、いずれも大した意味を感じていないはずだ。

 ただ、これに続く、日本株の上昇要因には株価収益率(PER)の拡大に表れた投資家の期待だけではなく、増益の寄与度が欧米を上回っていることが指摘できるとの分析は、記憶にとどめる価値がある。

 ある程度の大きさの株価変動を説明できる要因は、後から探すとたいてい見つかるものなのだ。