日本総合研究所理事・主席研究員。日総(上海)投資コンサルティング有限公司董事長・主席研究員。ウッドローウィルソンインターナショナルセンター公共政策研究フェロー。1983年中国復旦大学卒業、90年東京大学大学院博士課程修了。日本総合研究所入社後、香港駐在首席研究員、香港駐在事務所所長、ハーバード大学客員研究員、米AEIリサーチフェロー、ジョージワシントン大学客員研究員などを経て、現職。『中国 静かなる革命―官製資本主義の終焉と民主化へのグランドビジョン―』(日本経済新聞出版社)など著書多数。
3月5日から、中国では日本の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)が開かれ、習近平氏を国家主席に、李克強氏を首相に選出し17日に閉幕した。名実ともに習・李体制のスタートである。そこでここでは、改めて習・李体制の中国がどの方向に向かうのか、改革が行われるとすれば、何がそのメルクマールとなるのかを考えてみたい。
まず、昨年11月に中国共産党大会が開かれ、習氏が共産党総書記に就任した際に、ダイヤモンド・オンラインに「中国共産党大会開幕!習近平新体制の行方」を寄稿し、習体制の行方についてシナリオを提示したが、その検証から始めたい。その際に提示したシナリオは図表1にまとめているが、最も実現性の高いシナリオは、シナリオ2のケースB(政治改革を遂行しつつ対外強硬路線の施行)であるとした。習氏が共産党のトップとなってから、現在までの4ヵ月間の足取りを見ることで、このシナリオに修正は必要になっただろうか。
革新?それとも保守?
二つの相反する顔
習氏は昨年の11月29日に、北京国家博物館で開催されていた「復興への道」を見学した際に、「今のわれわれは中華民族復興の夢の実現」に最も近いところにいる」と公言し、「中華民族復興の夢の実現」を政権の目標として提示した。翌12月4日に、「八二憲法」(現在の憲法は1982年にできた)30周年記念会で「憲法に基づく統治」の重要性を強調した。