戦時の商社#8Photo:George Pachantouris/gettyimages

三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅の五大総合商社が激しくしのぎを削る分野の一つが、政府が脱炭素の切り札として期待を寄せる「洋上風力発電」だ。国内の洋上風力発電プロジェクトには、五大商社のいずれかが必ず顔を出している。特集『戦時の商社』(全16回)の#8では、ダイヤモンド編集部が独自に作成した「洋上風力番付」をお届けする。洋上風力で抜け出すのは?落とし穴にはまるのは?(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

洋上風力は総合商社の独壇場!?
第1、第2ラウンドで商社が“全勝”

「もはや洋上風力は総合商社のものじゃないか」

 あるエネルギー業界関係者は、2023年12月13日に公表された政府公募の洋上風力発電プロジェクトコンペ「第2ラウンド」の選定結果を見て嘆いた。

 選定結果が公表されたのは、第2ラウンドの対象となった4エリアのうち、秋田県男鹿市・潟上市・秋田市沖(以下、秋田県中部沖)、新潟県村上市・胎内市沖(以下、新潟県沖)、長崎県西海市沖(以下、長崎県沖)の3エリア。

 秋田県中部沖はJERA、J-POWER、伊藤忠商事、東北電力が、新潟県沖は独エネルギー大手のRWE、三井物産、大阪ガスが、長崎県沖は住友商事、東京電力リニューアブルパワー陣営が、それぞれ勝利した。

 21年12月に実施された「第1ラウンド」では、三菱商事が3エリアを総取りして圧勝。これまでの政府公募の洋上風力コンペにおいて、商社勢が“全勝”したことになった。

 しかも、秋田県秋田市・能代市沖で22年12月に運転を開始した国内初の大規模洋上風力発電プロジェクトを手掛けたのは、五大商社の一角である丸紅だ。

 国内において、洋上風力発電の主役を演じているのは、大手電力や再生可能エネルギー専業の新興勢ではなく、断トツで商社なのだ。

 それもそのはず。数千億円にも上る洋上風力発電プロジェクトは、資本力はもちろんのこと、プロジェクト組成力やプロジェクトマネジメント能力、高いコスト意識が求められる。これらは、海外のエネルギービジネスを数多く手掛けてきた商社が、大手電力や再エネ新興勢に比べて一枚も二枚も上手なのである。

 洋上風力発電プロジェクトに携わった経験を持つ五大商社のある幹部は「(電力会社や再エネ新興勢が)勝てるはずがないんですよ。だって洋上風力の経験に乏しいわけですから」と断言する。

 国内の洋上風力発電プロジェクトにおいて、商社が今後も主役を張るのはほぼ間違いない。そこで、ダイヤモンド編集部は五大商社の各社が獲得したプロジェクトの実績などを基に、「洋上風力番付」を作成した。

 次ページでは、五大商社の洋上風力番付をつまびらかにする。さらに、各社が担当するプロジェクトのリスク、洋上風力「第3ラウンド」以降で各社が参戦予定のエリアも解き明かす。

 洋上風力の分野で抜け出すのは、逆に落とし穴にはまるのは、いったいどの商社か。