今、老後を送っている「老後2000万問題」の当事者であるシニアのみなさん。彼らが持っている不動産は、若い世代にとっての「実家」に当たるかもしれません。シニア世代がお亡くなりになったあと、これらの不動産がどんどん空き家になるという現象が起こります。

 子どもたちは都心などで家族を持ち、実家には戻らないからです。2038年には、国内の空き家総数は2300万戸になるという予測があります。

15年後に空き家は2300万戸に増加
この問題はもはや他人事ではない

 さて、日本の住宅事情に関する歴史と文化にも触れておかないと、空き家2000万問題を身近に感じられないと思います。

 僕は現在47歳で、両親(父は他界していますが)が30代前半のときに生まれました。その両親の世代は「団塊世代」と呼ばれ、僕たちがちょうど「団塊ジュニア」です。

 分かりやすく言うと、たくさん生まれた世代とその子どもたちで、とにかく人数が多い。これが戦後日本の経済発展の背景、労働力であり市場であったことは明らかです。

 団塊世代は年間260万人が生まれた世代です。それに対して2022年の出生数は80万人割れしていますから、その差は歴然です。

 さて、その団塊世代の多くが、実家である地方から「就職列車」に乗って、都会に働きに出てきました。大学への進学で出てきた人もいるでしょう。その際に、地方(いわゆる田舎側)ではどういった現象が起きていたでしょうか。それは、その「家」の長男も含めた都会への人口流出です。

 それ以前はどうだったかというと、「長子相続」といって、長男はその家「家系としての家も、住まいとしての家」も、そして仕事も家業を継いでいました。そんな文化やしきたりがあったのです。だから住まいが増えるとすれば、次男以降の「分家」と呼ばれる家ですね。