販路拡大、生産効率アップ
認知度拡大……課題も見えてきた

 両者の「ブルーカーボン協定」は21年から5年間で区切りを迎える。23年はその中間地点だ。3者にそれぞれこれまでの取り組みを振り返ってもらった。

「糸島産のメカブを使った商品は大変好評で、自分たちの取り組みが評価されていると実感している。新しい取り組みだったがデメリットは一切感じなかった。

 今後は商品ラインアップのより一層の充実を図っていきたい。『糸島産』というブランドに『ブルーカーボン』を加え、品質と健康・環境問題に真摯(しんし)に取り組んだ商品を打ち出し、海外含めてのいろんなチャネルを通じての販路拡大を目標としている」(ヴェントゥーノ 中野代表取締役)

「地元産の資源を使ったヴェントゥーノさんの商品を身近な人たちが使っていて、その好反応に正直驚いている。環境問題へ取り組むことが自分たちの生業の活性化につながることに気付いた。それが一番うれしい驚き。課題としては、やはりメカブの生産量の安定確保、そして漁師のなり手不足の中でいかにして生産効率を上げるかだ」(糸島漁協福吉支所 瀬戸貴大さん)

「糸島の豊かな海洋資源を有効に活用した新商品が開発されたことによる地域資源の掘り起こしと糸島産のPR、また、その商品開発によるCO2の削減だけでなく、漁業者の所得向上にもつながるという、複数の課題を一つの手法で解決に導いているところを大変評価している。

 また、市職員(特に女性)が、ヴェントゥーノさんが開発された化粧品のモニターとして参加し、商品はもちろん取り組みに対する評価も高かった。この取り組みを認知している人の反応は非常に良い。一方で、周知不足でこの取り組みを知らない人が多いことが課題だと思う。加えて環境問題への啓発、特に子どもたちへの啓発は大事だとも考えている」(糸島市経済振興部 重富部長)

 環境問題の解決策の一つとして取り上げられる「ブルーカーボン」だが、その認知度はまだまだ道半ばであることも確かだ。糸島の事例には、雇用創出、地元移住、ふるさと納税品等での経済効果等、その活用には地域が抱える課題解決のヒントが詰まっている。その取り組みは今、全国各地に着実に広がっている。