増える個人への税務調査件数
追徴課税額も前年度の倍に

 国税当局がシェアリングエコノミーに目を光らせる理由は、成長分野であることはもちろん、それが「インターネットを介した事業」であるという構造的な事情もある。つまり、(1)広域的・国際的な取引が⽐較的容易、(2)足が早い(=参入と撤退が早い)、(3)無店舗形態の取引やヒト・モノの移動を伴わない取引も存在する(=外観上、取引の実態が分かりにくい)、(4)申告手続等になじみのない人も参⼊が容易――であるため「的確に対応していかなければ適正申告をしていない納税者を⾒過ごすことになりかねない」という。

ネットで稼いでいる人は要注意!税務調査の触手はシェアエコにも!国税庁「シェアリングエコノミー等新分野の経済活動に係る取引を行っている個人に対する調査状況」
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 そんなわけで国税当局は、法人はもとより個人に対しても、積極的な情報収集・分析を行い、税務調査を実施している。シェアリングエコノミー分野で個人に対して行われた税務調査は、2022(令和4)年度(税務行政における事務年度=7月~翌年6月)で1324件に上り、前年度から485件増(158%)となった(図1)。

 一方、調査で判明した22年度の1件当たりの申告漏れ所得金額は1508万円で、対前年度比109%となっている。また、申告漏れ所得金額の総額についても200億円と、対前年度比172%。1件当たりの追徴税額も前年度の266万円から320万円に増加しており、総追徴税額で見ると、同22億円から42億円へと倍近くまで増えている。

ネットで稼いでいる人は要注意!税務調査の触手はシェアエコにも!国税庁「暗号資産(仮想通貨)等取引を行っている個人に対する調査状況」
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 また、暗号資産(仮想通貨)についても、国税当局は個人取引の動きを追っている。22年度は615件の税務調査が行われ、21年度の444件から171件増えた(図2)。その他の項目も増加傾向にあるが、徴税額総額が21年度の53億円から64億円に増加しているにもかかわらず、1件当たりの申告漏れ所得金額と追徴税額は減少していることが分かる。

「1件当たり」が減り「全体」の額が増えている状況から推察できるのは、暗号資産取引が広く個人にも浸透している中で、利益が出ても税務申告しない人が増えているという実態だ。国税当局では、無申告についても情報収集や調査に力を入れている。