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再燃した欧州債務危機は本当に回避されるか?
世界金融に衝撃を与える小国キプロスの“素顔”

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第269回】 2013年3月26日
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 3月中旬、EUとIMFは、キプロス政府が昨年6月から要請していた金融支援策の内容を決定した。同国の金融システムの安定性を保つために必要と見られる約170億ユーロのうち、100億についてはEU諸国とIMFが支援を行う一方、残りの必要資金のうち約60億ユーロについては、同国の銀行の預金に対する課税によって賄うというスキームになっていた。

 ところが、キプロス議会はこの救済案に激しく反発し、預金に対する課税案を否決した。キプロス議会が課税案を否決したことで、救済策は宙に浮いた格好になり、キプロスを巡る混乱は世界の金融市場に大きな衝撃を与えることになった。

 為替市場では、リスクを嫌う投資家がユーロを売る一方、安全通貨と言われる円買いのオペレーションを行い、一時1ドル=93円台の円高になった。また、株式市場も不安定な展開となり、3月18日のわが国の株式市場は大きく売り込まれて、日経平均株価は340円下落することになった。

 足もとでキプロス政府は、国内大手2行の銀行を資本再編すること、その上で預金保険関連規則の対象外となっている大口預金を凍結し、債務返済に充てる資金を捻出することなどについて、国際支援機関と合意。これにより、最悪の事態は回避される見通しとなりそうだが、預金への全面的な課税を行なわない代わりに大口預金者の負担が増すことについては、少なからぬ波紋を呼ぶことが予想され、先行きは依然として不透明だ。

 ユーロ圏のGDPの約0.5%程度の小国であるキプロスの混乱が、これほど大きなインパクトを持つ背景には、今回の救済策に関する不手際や、ユーロ圏諸国の信用不安が燻ぶっていることに加えて、キプロスが抱えるロシアとの関係など複雑な要素が絡んでいる。

 そうした事情を過小評価することは適切ではない。今後、主要国が政策対応を誤ると、世界経済にとって重要な問題に発展する可能性を秘めている。

複雑なキプロス危機の背景
宙に浮いたEU、IMFの救済策

 2012年6月、キプロス政府はEUに対して、同国内の銀行の経営悪化を理由に支援策の実施を要請した。これによってキプロスは、ギリシャやアイルランド、ポルトガル、スペインに次いでEU内で5ヵ国目の要請国となった。それに対して、EUは要請を審議した上、とりあえずECBの資金供給を継続することで、キプロスの緊急事態の発生を抑制する姿勢を示した。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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