パレット(写真中央)の未回収が経営問題になりつつあるビール業界
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 犬猿の仲の4社を取り持ったのは、パレットだった──。

 激しい販売競争に明け暮れるビール4社が史上初めて共同出資会社を設立した。酒などの商品を搬送・保管するために使われる、荷役台「パレット」を共同で利用し、適正に管理することが目的だ。

 メーカーは卸や小売店向けに、ケースに入った商品をパレットの上に積んで搬送する。商品が売れた後のパレットは、メーカーに返却する仕組みだ。各社のロゴの入ったパレットを約60社の加盟会員間で共同利用する任意団体はすでに2004年からあったが、今回は法人化に踏み切る。

 理由は、パレットの管理問題。

「業界全体で毎年33万枚のパレットが行方不明になっており、毎年約18億円が新しいパレットの購入費に消える。パレットが足りず工場の出荷がもう少しで止まりそうになったビールメーカーもあるほどだ」(ビール酒造組合)

 工場では商品をパレットに積むところまで自動化しているため、予定出荷数量に準じたパレットがそろわなければ出荷もできない。しかも小売りチャネルの複雑化で未回収パレットは年々増えているという。

 消えたパレットは、卸や小売店の倉庫に放置されたり、店頭で別商品の什器や台などに勝手に流用されたりというケースが多いという。だが各メーカーにとっては取引先でもあり、あまり強いことは言えないというのが泣きどころだった。

 共同出資会社であれば「仮に取引先にパレットの返還を求めて法的措置を取ることになった場合もやりやすい」(丸山高見・アサヒビール常務)。これを機にパレットを伝票管理し、居所を把握するシステムなども構築、パレットの在庫の適正管理に努めるという。

 製造コストを極限まで削っているにもかかわらず、毎年、まったく必要のない経費として億単位でカネが飛んでいたパレット問題。共同会社化でこれが一挙に解決に向かうだけではなく、相互理解で新たな展開に向かうのではとの見方すらある。

 (「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木洋子)

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