ドラッグストア勝利の方程式「格安食品で集客→薬で儲ける」が崩壊し始めた理由Photo:PIXTA

飛ぶ鳥を落とす勢いで成長していたドラッグストア業界に異変が起きている。成長の原動力となっていた「格安食品で集客し、薬品・化粧品で儲ける」という勝利の方程式が崩れ始めているのだ。その背景にある「2つの理由」を、豊富な取材経験を持つジャーナリストが解説する。(流通ジャーナリスト 森山真二)

ドラッグストアの
“勝利の方程式”に異変!

「常勝」だったドラッグストアが成長の曲がり角を迎えている。

 売り上げ規模が業界トップのウエルシアホールディングス(HD)の既存店売上高を見てみると、2023年12月は前年同月比1.0%減という結果だった。「調剤」は堅調に推移しているものの、「物販」の不調が足を引っ張った形だ。

ドラッグストア勝利の方程式「格安食品で集客→薬で儲ける」が崩壊し始めた理由ウエルシアHDの既存店売上高(出典:公式Webサイト
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 業界2位のツルハHDは、23年11~12月の既存店売上高がプラスで推移していたが、前年同月比で1%台の低成長だった。23年9~10月は4%台で伸びていたものの、そこからの急降下である。

 年末は本来であれば、売り上げの柱である化粧品などがよく売れる「書き入れ時」だ。にもかかわらず、昨年の年末商戦は不発に終わった感が否めない。急成長を続けてきたはずのドラッグストアに何が起こっているのか。

ドラッグストア勝利の方程式「格安食品で集客→薬で儲ける」が崩壊し始めた理由ツルハHDの既存店売上高(出典:公式Webサイト
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 ドラッグストア市場は近年、ほぼ毎年のように急拡大を続けてきた。中には2桁の伸びを示した年もある。筆者は小売業界を長年取材してきたが、これほどの急成長を遂げた市場はかつての総合スーパー(GMS)くらいしか記憶にない。

 街にはドラッグストアがあふれている。都心では駅前に3~4店あるのは当たり前だ。極端な話、100メートルと間隔を置かないで店がつくられている。地場の食品スーパーが改装していたかと思えば、いつの間にかドラッグストアになっていることも多い。まさに「雨後のたけのこ」状態だ。

 すでに書き尽くされた話なので簡単に触れるが、そんなドラッグストアのビジネスモデルは次のようなものだ。

 まず、冷凍食品や加工食品などを安売りして集客する。次に、医薬品・化粧品といった粗利益率の高い商品を、食品の「ついで」に買ってもらう。そして、売り上げと利益を得る。

 いわば、食品の安売りを「集客装置」として機能させ、クスリや化粧品で利益を得ているわけだ。だが昨今は、そんなビジネスモデルが変調してきたとみられる。

 ドラッグストアに詳しい、とあるジャーナリストは「食品の安売りで集客し、医薬品や化粧品で利益を得るやり方が崩壊しつつある」と厳しい見方を示す。

 それはなぜか。筆者の考えでは、大きく2つの要因がある。