不正について謝罪する豊田章男トヨタ自動車会長記者会見で、トヨタグループで相次いだ検査不正について謝罪する豊田章男トヨタ自動車会長 Photo:JIJI

トヨタ自動車の豊田章男会長が、自動車の検査不正などが相次ぐトヨタグループのガバナンスの再構築に乗り出した。だが、1月30日に発表した不正の再発防止策は具体性に欠けるものだった。メスを入れるべき同グループの“病根”とは。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文)

創業の原点に回帰する“新ビジョン”に
グループ会社幹部が疑問符

 日野自動車やダイハツ工業、豊田自動織機といったトヨタグループの主要会社で、エンジンなどの認証試験における悪質な不正が相次いでいる。

 事態の収拾に向けて、同グループ創業家出身で、事実上の最高権力者である豊田章男トヨタ自動車会長が本格的に始動した。1月30日、不正の再発防止を含む「トヨタグループビジョン」を発表したのだ。

 グループビジョンの発表会見は、グループ発祥の地である愛知県名古屋市のトヨタ産業技術記念館で行われた。

 ビジョンの内容は、「発明」によって社会に貢献する創業の精神への回帰を促すもので、「誠実を貫き、正しくつくろう」「対話を重ね、みんなで動こう」といった不正防止のための“心構え”も盛り込まれている。

 しかし、グループ各社に取材すると、認証試験を行う現場はひっ迫しており、ビジョンのような“お題目”よりも、具体的な改善策が求められていることが分かった。

 次ページでは、トヨタグループの新たなビジョンと、現場の切実な課題がいかに乖離しているかを明らかにするとともに、新たな不正の発生リスクに迫る。