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財部誠一の現代日本私観

西武に牙を剥きはじめたサーベラスの本性

財部誠一 [経済ジャーナリスト]
【第18回】 2013年3月28日
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 「サーベラスのTOBに反対する」

 3月26日に西武鉄道やプリンスホテル、西武ライオンズなどを傘下に持つ西武ホールディングス(HD)の後藤高志社長は、筆頭株主である米国の投資ファンドが仕掛けてきたTOBに強く反対することを記者会見で明らかにした。

 筆頭株主が一方的にTOBを仕掛け、経営陣が記者会見でその理不尽に断固反対する。こんな場外乱闘の構図はめったにあるものではない。

 まずはリングにあがったファイターの解説が必要だろう。

 投資ファンドの名前はサーベラス・キャピタル・マネジメント(以下サーベラス)。会長は元副大統領のダン・クエールという米国有数の投資ファンドである。

 一方、記者会見を開いた西武HD社長の後藤高志は元みずほコーポレート銀行副頭取である。2004年、西武鉄道をめぐる有価証券報告書虚偽報告事件が発覚。翌年にはオーナーだった堤義明が逮捕。信用不安から経営破綻に追い込まれた西武グループ再生のために社長に就任したのが後藤である。

 その時、1000億円の資金支援に応じたのがサーベラスだった。投資の条件として発行済み株式の過半数の保有を条件にする投資ファンドが多かったなか、サーベラスは3分の1にも満たない32.4%に出資をとどめ、後藤が自由にその裁量を発揮できる環境整備に協力した。サーベラスの投資案件のなかでも異例な対応だった。

西武グループを持ち株会社へ再編
批判覚悟で動いた後藤社長の覚悟

 2005年の社長就任以後、後藤は元バンカーとは思えぬ現場主義の持ち主で、鉄道の保守点検の現場からスキー場のゴンドラ管理の現場まで、隈なく歩き、堤義明が作りあげた複雑怪奇な帝国の実態を解明し、オーナー経営者の顔色ばかり見てきた社風一掃と自律的な組織への変貌を現場に迫ってきた。だが、なんといっても後藤の実績は、諸方面の反対を押し切って現在の持ち株会社組織へと西武グループを再編したことだ。

 04年の虚偽報告事件後、その破綻の社会的な影響が大きすぎるため、秩父セメント会長だった諸井虔を委員長とする「西武経営改革委員会」なる第3者委員会が発足し、不透明なオーナー経営から脱却するための経営改革案が練られた。後藤も委員のひとりとして参加していた。

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財部誠一 [経済ジャーナリスト]

1956年生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、野村證券に入社。同社退社後、3年間の出版社勤務を経てフリーランスジャーナリストに。金融、経済誌に多く寄稿し、気鋭のジャーナリストとして期待される。BS日テレ『財部ビジネス研究所』、テレビ朝日『報道ステーション』等、TVやラジオでも活躍中。また、経済政策シンクタンク「ハーベイロード・ジャパン」を主宰し、「財政均衡法」など各種の政策提言を行っている。


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経済ジャーナリスト・財部誠一が混迷を極める日本経済の現状を鋭く斬るコラム。数々の取材から見えた世界情勢を鋭く分析するとともに、現代日本にふさわしい企業、そして国のあり方を提言していく。

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