大学全入時代といえども
経済的なハードルは上がっている

 大学生の収入にアルバイトが占める割合は1970年以降、増加を続けています。全国大学生活協同組合連合会の調査によると下宿などをする学生の収入の約4分の1をアルバイトが占め、平均金額3万2340円という数字は、10年前に比べて1万円も高くなっています。また、仕送りなど家庭からの経済的支援がない、もしくは家庭からの給付だけでは修学が困難だという理由でアルバイトをしている大学生は約3割という報告もあります(日本学生支援機構「令和2年度 学生生活生活調査報告」)。

 コロナ禍では飲食店などが休業してアルバイトができず、収入が絶たれて大学の学費が払えなくなったという学生のケースが複数報じられていましたが、大学の学費を親だけで支えきれず、子どもが稼いでギリギリでまかなう例は珍しくないのです。

 特に私立大学や自宅外通学の場合には高額な費用がかかるため、全額を自分たちだけで用意するのは難しい家庭も多いはずです。筆者はかつて大手予備校で働いていた経験がありますが、理系のクラスでは経済的な事情から途中で学費の安い文系へ転向するケースもありました。奨学金の利用可否が影響したかどうかはわかりませんが、子どもの大学進学はイメージ以上に負担が大きいことなのかもしれません。

 そもそも奨学金を借りられたとしても、卒業後に子ども自身が返済していかねばなりません。大学は親が行かせるところではなく、子どもの自助努力で行くところ、という位置づけになってしまったということなのかもしれませんが、貸与型の奨学金を利用すると社会人のスタートから借金を背負うことになりますから、利用については慎重に考える必要があります。

 ちなみに国の奨学金には返済(返還)が不要な給付型奨学金もありますが、こちらは主に低所得者向けの制度です。2024年には拡充が予定されていますが、それでも世帯年収600万円程度までしか想定されておらず、年収1000万円層は圏外です。

 少子化の一方で大学や学部の新設で入学定員が増え、大学の志願者数を上回る「大学全入時代」ともいわれています。2022年度の大学進学率は56.6%と過去最高を更新しました。しかし、子どもを大学に通わせる経済的なハードルは親世代が大学に進学したころよりも高くなっているのです。