私立大学も、同じく1975年度の18万2677円に比べて、2021年度には93万943円と、授業料の平均額は5倍以上になりました。入学金や設備費は低下傾向にありますが、学生の負担総額は重くなっています。

 加えて、遠方の大学に入学して自宅外から通う場合には仕送りも必要です。学生寮やアパートの家賃、水道光熱費、食費、日用品費などを合わせると、1カ月に平均約12万円の生活費が必要で、このうち約7万円を親が仕送りで支えているのが、自宅外通学の大学生の実態です(全国大学生活協同組合連合会 第58回学生生活実態調査 概要報告)。

図_大学授業料と民間企業の平均月収額同書より 拡大画像表示

 しかし近年は親にゆとりがなくなってきているのか、親からの仕送り額は右肩下がりになっています。大学生の生活費は上がってきているにもかかわらず、月に10万円以上の仕送りをしている家庭の割合は1995年に約62%だったのが、2021年には約28%にまで落ち込みました。賃金が上がらないうえに大学費用が高騰し、親の経済力だけでは子どもが親元を離れて進学するのは相当難しくなったことをうかがわせます。

 そんななかで増えているのが奨学金の利用です。今、大学生(昼間部)の49.6%は奨学金を利用しています(日本学生支援機構)。奨学金というと、かつては低所得の家庭の学生が利用するものというイメージがあったかもしれませんが、現在は学生の半数が奨学金を活用しているのです。

 世帯収入別に見れば奨学金を利用している学生は収入が低い世帯ほど多く、年収900万円以上の世帯では24%にとどまってはいますが、その裏には、誰でも奨学金を借りられるわけではなく、親の所得による利用制限が存在するという事情もあります。家族構成や進学先が国立か私立か、自宅から通うか一人暮らしかにより収入基準額は細かく上下しますが、多くの場合、年収1000万円前後がその足切りラインになります。

 日本で最も多くの学生が利用する日本学生支援機構の貸与型奨学金は、子ども本人の学力のほか家計収入が選考基準になります。専業主婦と会社員の親で、子ども1人の場合は年収1009万円、子ども2人なら年収1100万円、3人なら1300万円が上限の目安とされ、親の年収がそれ以上なら借りられません。他の奨学金制度も使えなかった場合、大学の費用は親の収入や貯蓄、または子どもがアルバイトをして工面していくことになります。