猛反発を食らった
「経営再建」への道筋

 当時、ターンアラウンドの知識やノウハウは全くありませんでした。思考は単純でした。お金がないのなら儲ければいい。売上を増やして、無駄な出費を削ればいいだけの話です。

 家計を管理するのと同じです。そもそも給料が少ないのか、給料はそこそこあるけれど無駄な支出が多いからダメなのか、と自分の実体験に照らしてそのバランスを分析し、社長や社員に実態を伝えて経営再建への道筋を伝えていきました。

 当時、私はまだ30代前半。周りの社員はみな年上です。

「なんで、入社して間もない若造に偉そうにいわれなければならないのか」「これまで自分たちがやってきたスタンスを崩さないでくれ」

 多くはそういった反応でした。しかし、そもそも後ろ向きのスタンスで続けていても何も解決しません。

 事業を再生するためなら、べつに嫌われてもかまわないと思い、私のやろうとしていることを懇切丁寧に説明していきました。

 それでも刺さらない人には刺さりません。ただ、一部には目の色の変わった人もいました。その目を輝かせた人たちをどうやって多勢にしていくかをまず戦略の一つにしました。

 役職や勤続年数などの垣根は全く関係なしに、私の提案を理解して前向きに捉えてくれた人たちだけを残そうと考えたのです。

 目の色を変えて頑張ろうとなったのは、最初は全社員60人中わずか3人だけでした。それも営業の若い社員1人とアルバイトの子2人です。

 でも、若いからこそ、「この会社、このままではヤバいよね」という鋭敏なセンサーと危機感を持っていました。

 そこに私自身も感銘を受け、一緒にやっていこうと決めたのです。そして、徐々に上の人間も切り崩していこうと考えました。

経営状態を数値化して
客観的に評価する

 私の戦略は、とにかく主観を排して経営状態を数値化して示し、客観的に評価するというものです。このやり方をどんどん導入しました。

 たとえば、「売上が3億で、それに対して使っているお金がこれだけあります。単純に足りていませんよね」とまず説明します。