承認とつながりのために
オタクに憧れる若者

 昨今、「何者かになりたい」と考える若者の中には、「好きなものに夢中になっている人、詳しい人」という象徴としての「オタク」に憧れる人も多い。この背景にもSNSのコミュニティーが影響している。

「オタクへの憧れにおいては、『何かが好きになりたい』という欲求よりも、『自分が何者であるかを提示でき、それによってSNSなどのコミュニティー内の他人に承認され、つながりたい』という欲求の方が大きいでしょう」

 何かを好きで(推して)いることで、即時的な精神的充足を得られ、かつ自分が何者かを提示できる。若者にとっては、推しをつくり、消費することは、生きるための戦略ともいえるだろう。

 一方、推しへの過剰な消費も危惧されている。自らの経済力を超えてまで貢いでしまうメカニズムについて廣瀨氏はこう語る。

「本来の推し活であれば、お金を払って得た対価(グッズ、握手、その他サービス)に満足するはずです。しかし、お金を払う行為自体に満足してしまうケースもあり、本人にとってお金を使うことは手段ではなく目的化していきます。例えば、同担(同じ対象を推している人、ライバル)に負けないために、支払う金額を競うといったケースです。こうなると、消費が目的化しているため、すぐにまたお金を使わないといけないという悪循環に陥ってしまいます。同担と金額を競うようになると、推しの応援ではなく、他人を蹴散らすことに本来の目的がすり替わっていくのでしょう」

 時代や社会的な背景と密接につながっている推し活。今後の消費の変遷に注目したい。