日経平均株価「最高値」の虚実 #1Photo:Stefano Madrigali/gettyimages

日経平均株価が約34年ぶりに史上最高値を更新した。記録的株高に「バブルだ」との警戒感も根強いが、先行きをどう考えればよいのか。緊急特集『日経平均株価「最高値」の虚実』の#2では、市場経験約40年のベテランエコノミスト、神谷尚志氏が大展望する。

日本企業の収益が拡大
「八つの背景」が株高を導く

 日本株が歴史上の高値を更新した。日経平均株価は2月22日、前日比836円52銭高の3万9098円68銭で取引を終了。1989年末に付けたこれまでの終値の史上最高値(3万8915円87銭)を超えるに至ったのだ。

 海外マネーの流入が日本株を押し上げているのだが、その主な理由は、日本企業の収益が拡大していること。他の理由も含め、日本株上昇の八つの背景を列挙すると以下の通りだ。

(1) 日本企業の海外収益が好調なこと。これは、国際収支の所得収支にも表れている。今や、日本は貿易で稼ぐ国ではなく、海外現地法人の収益で企業業績を高めている。

(2) 日本銀行のマイナス金利解除が予想される一方で、金融緩和策は継続の可能性が高い。

(3) 新型コロナウイルス感染拡大とロシア・ウクライナ戦争に伴う輸入インフレを起点とした物価高が起き、あれほどまで苦労していた「デフレ脱却」が達成されようとしている。

(4) EV(電気自動車)に出遅れた(ように思える)トヨタ自動車(時価総額日本一)だったが、EVのデメリットにも注目が集まるようになると、ハイブリッド人気が高まり、まるで成長株のように空前の好決算で株が買われている。

(5) 東京証券取引所による低PBR(株価純資産倍率)改善要請もあり、企業は資本効率の改善策を打ち出すとともに、自社株買いが高水準となっている。

(6) 今や、世界の株式市場をけん引しているのは米エヌビディアや米マイクロソフトなどのテック企業であるが、日本にも、東京エレクトロン、アドバンテストなど、米国を除けば、他市場に比べてテック企業が多い。

(7) 中国経済が悪化している。不動産バブル崩壊はかなり深刻だとみられる。これを受けて、海外マネーが中国から日本株へシフトしているようだ。

(8) 「新NISA」の導入で、日本国民が貯蓄から投資へと積極的になり始めた。

 しかし、日本経済を見ると、インフレや賃上げ機運、それに百貨店の売り上げ好調といった話題はあれども、全体として消費は低調。しかも直近の実質GDP(国内総生産)は2四半期連続マイナス成長となり、テクニカルリセッション(景気後退)に直面している。

 2023年のドル換算GDPはドイツと逆転し、日本は世界第4位に後退した。89年のバブル相場ほどではないにしても、実際のところ、今の日本株はバブルではないのだろうか?そんな疑問を持つ人も少なくないだろう。

 次ページでは、今の株価がバブルなのかどうかを見極めるポイントについて、三つの指標を基に解説。日経平均「最高値」の原動力の正体を解剖する。さらに、この先の相場動向を見通す上で最も注目すべきデータとは何か、市場関係者が恐れる“最悪シナリオ”までを明らかにする。