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生活保護のリアル みわよしこ

ギャンブル依存症を知らずに依存症対策!?
「生活保護費浪費禁止条例」が逆効果になる可能性

――政策ウォッチ編・第19回

みわよしこ [フリーランス・ライター]
【政策ウォッチ編・第19回】 2013年3月29日
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2013年3月27日、兵庫県小野市議会は、数多くの問題が指摘されている「小野市福祉給付制度適正化条例」を可決した。内容のうち特に問題となっているのは、「生活保護などの福祉給付を受けている人々が、ギャンブルなどの浪費を行っている場合には、地域住民が市に情報を提供する」という部分だ。そもそも、本人の生計の維持を危険にさらすほどの浪費に対して、周辺の人々が注目したり干渉したりすることは、問題の解決のために有効なのだろうか?

今回は、ギャンブル依存の研究者に、小野市の適正化条例への意見を聞いた。専門家から見て、小野市の試みに成算はあるだろうか?

干渉すればするほど
悪化するのが依存症

 2013年2月27日、兵庫県小野市議会に提出され、3月27日に可決(施行は4月1日から)された「小野市福祉給付制度適正化条例(適正化条例)」は、前回レポートしたとおり、

 「生活保護などの福祉給付受給者であることは、そうでない人と異なる取り扱いを受ける理由になりうるのか?」

 をはじめとして、数多くの問題点をはらんでいる。そもそも、

 「生活保護を受給している人が、(他の誰かによって)問題ありとみなされる消費をしている」

 という問題に対し、周辺の人々の視線や言動は、解決をもたらしうるのだろうか? かえって本人の反発を招き、

 「お前らがそんな目で見るから、そんなことを言う上に言い方が悪いからムカついた。今まで以上に問題を起こさずにいられるか!」

 と自暴自棄の行動に走らせたりする可能性もあるのではないだろうか?

 筆者は、長年にわたってギャンブル依存の研究を行なっている滝口直子氏(大谷大学教授・文化人類学)に、専門家としての意見を聞いてみた。滝口氏は開口一番、

 「地域のネットワークの中での『監視』『説教』『なじる』で、ギャンブル依存症者が回復につながった例はないです。そういう行動って、結局、『上から目線』でコントロールということですよね?」(滝口氏)

 と、小野市の適正化条例が意図するところに疑義を表した。自分では善意や親切だと思っており、口にしたり行動に移したりすれば自意識の満足も得られる行動が、相手の役に立っていない場面は、確かに少なくない。

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みわよしこ [フリーランス・ライター]

1963年、福岡市長浜生まれ。1990年、東京理科大学大学院修士課程(物理学専攻)修了後、電機メーカで半導体デバイスの研究・開発に10年間従事。在職中より執筆活動を開始、2000年より著述業に専念。主な守備範囲はコンピュータ全般。2004年、運動障害が発生(2007年に障害認定)したことから、社会保障・社会福祉に問題意識を向けはじめた。現在は電動車椅子を使用。東京23区西端近く、農園や竹やぶに囲まれた地域で、1匹の高齢猫と暮らす。日常雑記ブログはこちら


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急増する生活保護費の不正受給が社会問題化する昨今。「生活保護」制度自体の見直しまでもが取りざたされはじめている。本連載では、生活保護という制度・その周辺の人々の素顔を知ってもらうことを目的とし、制度そのものの解説とともに、生活保護受給者たちなどを取材。「ありのまま」の姿を紹介してゆく。

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