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製薬業界の“弱み”が露呈した予想通りの結論だった。
新薬を開発する製薬企業の業界団体である日本製薬工業協会(製薬協)は、3月下旬に開いた総会で、日本医師会などの猛反発を受け、2013年度から予定していた情報公開を一部変更した。
具体的には、13年度から予定していた各製薬企業が医師に支払った原稿料や講演料などの個別金額の公表について、1年先送りにすることを決めたのだ。
この情報公開は、「企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン」。製薬企業が支払った医師や医療機関に対する研究開発費や原料・講演料などを各社のホームページ上で公表しようというもの。
製薬協では、透明性ガイドラインを11年1月に策定し、13年度公表実施に向けて準備してきた。
ところが、自分の個別金額がネット上で白日の下にさらされることを知った医師からは、「週刊誌のネタにされる」「世間や同僚からねたまれる」「子供が誘拐される」などの反対意見が続々と出始めた。
そこで、医師会は13年1月には透明性ガイドラインの運用を検討する「医学関連利益相反問題協議会」を設置し、日本医学会などと共に個別医師に対する個別金額の公表に反対を唱えてきた。
ある内科医は「講演料は通常でも数十万円、有名教授などでは数百万円以上の金額が支払われる。製薬企業は(公表の)同意書を持ってはくるが、じっくり読まない医師もいる。まさか個人名までが公表されるとは思わなかった医師も多いのでしょう」と説明する。
そもそも、透明性ガイドラインは、世界最大市場の米国で、新薬開発の透明性確保のため、10年3月に製薬企業が医師に支払った金銭の授受の公表を義務づける法律が制定されたのがきっかけだ。ファイザーなどの外資系企業が本国の方針によって日本国内でも公表する方針を打ち出したこともあり、業界全体で足並みを揃えるためにガイドラインを設けたのだ。